第6章 学生編・終夏のSonority
まぁ無償で歌う場所を提供してくれてるし、僕達の集客で得たお金はちゃんと払ってくれるし。少しくらい役に立ってあげなくもない。
「今回のライブどうするーって言っても今回は特別な観客を招待してるからいつものVIP席は使えないけど」
「大方、学院の生徒だろう。今回は僕達はモニタールームで拝見させてもらうよ」
このライブハウスに良く足を運ぶ僕達Valkyrieは多分、誰よりもNoGenderの事情に詳しい。池上先輩と椎名がNoGenderのメンバーだって事は知ってるし桜音がマネージャーである事も知っている。だけど彼女がNoGenderのライブを見てる所は見た事が無いが…後日録画したのを確認しているのだろう。
「じゃあどうせならライブ前の準備、手伝って」
「………」
「って言っても当日は楽器の配置とかゲームの用意とかくらいしか無いけどぉ」
それはつまり手伝う要因は必要無いじゃないか。
※※※
時が経過するのは早く、あっと言う間にNoGenderのライブの日がやって来た。ライブハウス現地が集合場所で開演は18時。一般の観客は基本的に立ち見でキャパもそんなに大きくないらしいから開場は17時半。しかし我輩達はアイドル。色々と巻き込まれない様にする為に遅くても16時半には会場入りを頼まれている、らしい。
「ねー朔間先輩」
「この繁華街って絶対僕達が通っていい場所じゃないよね?」
夜になったら一際ネオンが輝く裏路地。そんな場所に立つビルの地下二階が天祥院くんが言ってたライブハウスの場所だった。我輩達とは違った夜闇の魔物が潜んでそうな場所。
「ライブハウスIKE…」
「あ、見て。ここに看板立ってる」
ポスターカラーで看板には"本日S会員様のみ"と言う記載が可愛いイラスト付きで書いてあった。
「あ、この絵知ってる!」
「国民的漫画だよね!上手!」
「ほら行くぞい。時間ギリギリじゃ」
そう双子に促して地下へのエレベーターに乗って地下への行けばエレベーターの扉が開いた瞬間に池上先輩と遭遇する。
「あらぁ!待ってたわよ~!」
"こっちこっち"と手招きされて広いエントランスを突っ切って近寄れば"さぁどうぞ"と入口の重たそうな扉を開けて中に通してくれる。
「「わー凄い!」」