第31章 学生編・中秋のAbend
姫はまだ誕生日来てないから十七歳だし。
そもそもあの箱の経営者であるオカマがそれを許さない。普段は緩いけど他人の目がある時はそこら辺はきっちりしてるし。だから私達がライブしようがしないであろうが21時にはちゃんと終わらせて21時半にはスタッフも完全撤収させて22時になる前にはお店を閉めるし。
まぁ身内だけの時は夜中や明け方まで箱に居座ろうが飲酒喫煙しようが何も言わないけど。
「じゃ身内だけでとか」
『それ何の意味があるの?』
「んー…もう暫くは夜通しライブは無理か」
『………』
夜通しライブが可能になる頃には…私達NoGenderもどうなってるか分からないけど。
「何?その顔」
『べっつにぃ?2wink可愛いーーー!!!』
一同「!?」
※※※
『はい、GO!』
「ぅわっ!?」
ドン、と軽く背中を押せばステージギリギリの舞台袖で立ち止まる。
「有難う御座います桜音さん」
『まぁあの兄弟にはちょっとNoGenderもお世話になってるしね』
「そうなんですか?」
この様子だとPV製作の手伝いの事は知らなさそうだし余計な事は言わない方が良さそうと判断し、ステージに目を向けると零さんと凛月君が対峙していて何かを話していた。会話の内容はここからだと途切れ途切れにしか聞こえない。
「約束を違えた我輩には…」
約束。
二人の間には何かしらの約束があって…零さんの方が約束を守れなくて仲が拗れた…否、拗れたと言う表現は間違ってるか。お姉ちゃん目線で言うと弟の凛月君は"どうして約束破ったの?"って感じで兄の零さんは多分理由とか話してないんじゃないだろうか。
どんな理由にしろ、どんな些細な事にしろ長子ってもんは下の子に変な心配とか掛けたくないからね、うん分かる。
「お二人の会話、聞こえてるんですか?」
『んーまぁ少しだけ』
「耳、良いんですね」
『地獄耳だから』
そんな会話をあんずちゃんとしてたら、ふと聞こえた細くもハッキリした言葉。
「………有難う、お兄ちゃん」
『!?』
お兄…ちゃん?お兄ちゃん!?
あの凛月君がお兄ちゃん呼び!?アタシも吃驚したけど零さんも吃驚…いや、あれはとても嬉しそうだね。
ほほう。そうかそうか。