第31章 学生編・中秋のAbend
『少し前までは医者になりたいなーって思ってたんだけど…』
「今は違うの?」
『違わない様で違うかな』
一同「………」
『それにアタシ、もう将来が決まってるから』
不自然な程に幸せそうで綺麗な笑顔が逆に胡散臭く思えた。
「智桜姫ちゃ『ほら、皆さんそろそろ出番なのでは?無駄話してる時間はありませんよ』………」
深く冷たくドス黒い闇一つ、だな。
※※※
ふむ…また少し喋り過ぎてしまったか。別に気ぃ抜けて緩い訳でも無し…あの人の人柄と…慣れか。うん、気を付けよう。今一度、気を引き締めて距離感を………
「…さん、姫さん!」
『っ!?あん、ずちゃん…?』
「大丈夫ですか?具合でも…」
『いえ大丈夫です。少し考え事をしてただけなので』
吃驚した。人の気配には敏感な方だけど考え事をしてたせいか気付かなかったし何よりこの子、気配が無い。
「あの…お色直しお願いしてもいいですか?」
「もう本当に何なの?急に着替えろとか意味分かんないんだけど」
『凛月君?』
Knightsのパフォーマンスはもう終わってるハズだけど…さっきの死神風の衣装とは違うし。かと言って他のKnightsの人は居ないし。連れて来られた本人も分かって無さそうだし。
「お願いします」
『!』
ちらり、とあんずちゃんが舞台袖からステージに目配せする。今現在パフォーマンスをしているのは2winkとUNDEAD。そっか。成程そういう事ね。
『はい大人しくしてね凛月君。ズレたらスプラッタにするから』
「も~…本当に何なの…」
※※※
「割と遅い時間だね。どうするゴトーパイセンに迎え頼む?」
『いや大丈夫でしょ。多分姫がもう連絡してんじゃないかな?』
ライブ中の携帯は御法度だから腕時計をこっそり確認すると、そこそこいい時間でライブもまだ終わそうにないし終電は間に合いそうにない。折角誘って貰ったのに途中退場はパフォーマーにもあんずちゃんにも悪い。
十八歳未満は22時以降は出歩いたら駄目みたいな法律があったと思うけど…この学校は特殊かな?っつっても私達も普段がアレだからあまり人の事は言えないけど。
「俺達も夜通しライブとかしてみる?」
『馬鹿なの?それは難しいよ』