第28章 学生編・中秋のPassion
無視するのも感じが悪いし酒屋から出て来て少し離れた所で声を掛ければ面倒臭そうに顔を顰められた。
『零さん…と紅月の鬼龍君だっけ?』
「NoGenderの化粧担…じゃなくてマネージャー」
『はは、間違ってないから訂正しなくていいよ』
そもそもマネージャーなんて柄じゃないし急遽決まった役柄だし、と肩を竦める。
急遽決まった役柄………?じゃなくて。
「誘惑してアルコールを買うとはやり手じゃのう」
『これ、本来アタシの仕事じゃ無いんですけどねぇ…池ちゃんは高級なお酒しか買ってこないしゴトちゃんはビールしか買ってこないし』
社会人二人がお酒のセンスが無いのでアタシが買い出しです、数本のお酒が入ったエコバッグを肩に掛け直して不思議そうな顔付きで我輩と鬼龍くんを見比べる。
『何か…二人共タイプが違う様に見えるんですけど仲良しなんですか?』
「クラスメイトじゃし仲は悪く無いかのぅ?」
「たまたま買出し先が一緒だったから後輩連れて同行してるだけだ」
「鬼龍殿~!」
噂をすればなんとやら。アドニスくんと神崎くんが息を切らして戻って来る。大方、買物リストのメモ用紙の事だろう。
「すまぬ…我、めも用紙を…?お話中であったか…」
「む…確か姫さん…NoGenderのマネージャー?」
「NoGenderのまねぇじゃ………っ!?な!ななな!何と破廉恥な!!!女人が胸元を見せるなど!!!」
「こら神崎!少し静かにしろ」
※※※
「嘘でしょ…アンタ…プロデューサーじゃなかったの?」
『あはは…まぁ自称だから』
困った様に乾いた笑いを浮かべる。プロデューサーが藍音ちゃん…藍音ちゃんがプロデューサー…否、この際どっちでも良いんだけど、まさかこんなところでこんな衝撃的な真実を知る事になるとは。しかもValkyrieの二人やくまくん達朔間兄弟は知ってるなんて。
まぁそれもそうか。簡単に人の秘密バラすタイプじゃないし多分他言なんて許されない秘密だし。
「それ、言って良かったの…?」
『………あ、駄目だね。聞かなかった事にして』
「馬鹿にも程があるのだよ下宮。折角僕が影片の口を塞いだと言うのに」
「んあっ!?御免な実菜未さん…」
成程。この二人は知ってるだけあって親しそう。