第28章 学生編・中秋のPassion
見た目は充分子供だけど、と言う突っ込みはしないでおく。
『私達も三年生だからねぇ…ちょっと進路の事で悩んでるって感じ』
お先真っ暗よ、と肩を竦める。馬鹿そうに見えて意外と将来の事とか考えてるんだ。まぁそうか。普通の高校生だし進学か就職で悩むところ…って時期的に遅いんじゃ…
「何でなん?ずっとバンド続け「影片!」むぐっ!?」
斎宮が慌てた様子で影片の口を塞ぐ。
『あぁ、気にしなくていいよ。どうせValkyrieと朔間兄弟にはバレてるし』
「ん?凛月ちゃん?何の話?」
「あ…えっと…」
『私、NoGenderのキーボードの藍音』
「「!?!?!?」」
ボトッと鞄が地面に落ちた。
※※※
「おぉ!あどにす殿!これが噂の"しょっぴんぐもぉる"であるぞ!」
「広いな…迷いそうだ…」
まるで子供の様にショッピングモールではしゃぐ後輩を横目に保護者として同伴してる俺ともう一人。その肝心なもう一人は既にベンチに腰掛けて休んでしまっている。
「おい朔間。てめぇも用事で此処に来たんだろ?」
「我輩おじいちゃんだから疲れたし。買物はアドニスくんに任せるとしようぞ」
「任せてくれ朔間先輩。荷物運びは得意だ」
「我も手伝うぞ!あどにす殿!」
と買物リストのメモ用紙を持たずに一目散にバラける。ちゃんと買う物覚えてんのかあの二人。
「ほれ、買物は元気な若者に任せて我輩達、は…」
「?」
ピタリと言葉を詰まらせる朔間を見れば珍しく吃驚した様な顔をしていて、その視線の先はリカーマウンテン。男性店員を誘惑する女が居た。
「えと…随分と若く見えますので念の為、身分証明書の提示を…」
『あらぁ?お兄さんったらアタシの事をそんなに若く見てくれるの?』
「いや…あの…」
『でも良く見てぇ?こんな我儘な身体をしたお子様が酒屋なんかに来るかしら?』
「お買い上げ有難う御座います!」
※※※
『ふふん♪チョロいチョロい♪』
と上機嫌に酒屋から出て来る智桜姫ちゃん。ライダースジャケットの下に割と大きく胸元の開いたTシャツにスキニーパンツ。学校帰り、と言うわけじゃ無さそうで恐らくお酒なんかを購入してるから声をかけるのは迷ったが。
「智桜姫ちゃん」