第26章 学生編・中秋のMenuett
「そ。吸血鬼」
『吸血鬼って言うと…トマトジュースなんですか?血じゃないんですか?』
馬鹿にする訳でもなく、笑う訳でもなく、普通に真顔で不思議そうに小首を傾げながら質問をする。
「我輩、血とか痛いのとか嫌いじゃし。じゃからトマトジュース」
『トマトジュースって血の代わりになるんですね…』
"トマトに鉄分ってそんな含まれて無い…と言うより含まれて無い気がしますけど"と真剣な顔付きでトマトジュースを凝視する。こんなファンタジーな話は"馬鹿じゃないの"って一蹴しそうなイメージだったが…意外と人の話はちゃんと聞くらしい。
「我輩はまだマシじゃ。凛月は血も色濃く受け継いでおるし我輩より大変じゃろうて」
『へぇ…吸血鬼って大変なんですね』
「お兄ちゃんは可愛い弟をこんなにも心配しておるのに辛辣だし冷たいし…」
『あー…それは仕方無いんじゃないですかね』
どう言う意味だ、と智桜姫ちゃんを見ると、こんな表情も出来るのかと言いたくなるくらいの柔らかい笑顔で窓の外を見ていた。
「………」
『アタシは一番上だから弟妹の気持ちは分からないけど…メンバーは良く言ってる。兄姉の事は大好きだけど必要以上に構うから、たまに凄く鬱陶しく感じるって』
「メンバーって…NoGenderの事かや?」
『ええ』
聞けばメンバーは皆、兄弟姉妹が居るとの事。
池上先輩は姉が二人と弟が一人。紫音くんは兄が一人と妹が一人。黄音くんは兄と弟が一人ずつ。下宮くんは兄姉が一人ずつと弟が一人。意外にも皆、兄弟が多い。
因みに智桜姫ちゃんは弟妹が五人も居るとの事。どうりで歳の割には達観したしっかり者な訳だ。
※※※
(智桜姫ちゃんは話題に朱音くんをあまり出さんのぅ…まぁあまり仲が良さそうでは無い様じゃし…)
『因みに朱音も』
「っ!?」
『弟妹が居ます…って大丈夫ですか?』
あまり朱音の事を語らないのもちょっと不審がられるかなって思って口に出したら何に吃驚したのか軽く喉に飲み物を詰まらせるから紙ナプキンを差し出せば口を抑える。
「すまんのぅ…おじいちゃんじゃから喉が狭くて」
『…はあ…?』
おじいちゃんって…確かに喋り方は古臭いしスマホが苦手とは聞いたけど一個しか変わらないのに。