第26章 学生編・中秋のMenuett
『生演奏…また難しい提案をしてきますね』
「難しい、という顔付きでは無いのぅ」
どちらかと言えば…面倒臭い、という顔付き。
『…分かりました。ではその手配がこの前教えて頂いた勉強のお礼、と言う事で宜しいですか?』
「構わんよ。場を設けてくれるのであれば、あの程度いくらでも教えても良い」
『………』
流石に色良い返事は貰えないか。
NoGenderは社会人二人と学生三人。しかも学生は全員三年生と見るから受験や就活で忙しい時期ではあるし、マネージャーである智桜姫ちゃんはあの有名なエリート学校。難関な大学受験も控えているだろう。
『こればかりはアタシの一存で勝手にOKする訳にはいかないかな…』
「まぁ無理にとは言わん。各々都合や事情はあるじゃろうからな」
『………変なの』
「何がじゃ?」
澄んだ目が我輩を映す。
『依頼する割には、あまりNoGenderに興味なさそうだなって思いまして』
※※※
こうゆう風に個人的にアタシに依頼を持ち掛けるくらいだから何かしらの思惑があるのでは無いかと思っていたけど…此方側の都合も考慮するくらいだし…何より探りを入れたりするなら池ちゃんとか他のメンバーを選ぶだろう。
つまりはアタシがNoGenderのマネージャーとして話してる、と解釈して変に疑うのは失礼か。
「興味はあるぞぃ。なんたって謎だらけじゃからな」
『まぁ零さんは多分NoGender表事情、半分くらいは知ってる貴重な人だとは思いますけど』
「つまり残りの表半分は朱音くんが鍵、と言う事かのぅ?」
『お答えし兼ねます』
そう答えれば"手厳しいのぅ"と言いながらトマトジュースを啜る。そう言えば箱に居る時もトマトジュースだった気がする。トマトジュースとはえらく健康的だな。まだ健康を気にするお年では無いだろうに。
「智桜姫ちゃんも飲むかや?」
『結構です』
※※※
今に始まった事では無いが見掛けに寄らず随分とハッキリと物を言う。池上先輩も言っていたが、もっと淑やかにしていたら本当に敵無しってくらいモテるだろうに。
『何故いつもトマトジュースなんですか?』
「我輩、吸血鬼じゃから。赤いもの飲まんといけないんじゃよ」
『吸血鬼?』