第25章 学生編・中秋のBurlesque
「にゃー…」
『………』
アタシが起き上がると引っ張るのをやめて何処かに歩いて行く。数メートル歩いたところで此方を振り返って付いて来いと言わんばかりに鳴く。
『はいはい分かりましたよ。付いて行けば良いんですね』
何処に連れて行こうとしてるのかは分からないけど寝起きの運動として、ちょっとだけ付き合ってあげるか。
※※※
「「「にゃー」」」
「うーん…お前達ばかり集まってもなぁ…」
この状況を脱する事は出来ない。霊感(インスピレーション)の誘うままに街を歩いてたらいつの間にかこんな山奥の崖に生えた立派な枝に引っ掛かっていた。別に落ちても死にはしない高さだが怪我はするし、どんな風に引っ掛かってるか分からないから身動きの取れない状態がかれこれ三十分は経過してる。
「いっその事暴れて落ちるか…」
『馬鹿じゃないの?』
「!?」
頭上少し上から声が聞こえる。この色艶のある声は何処かで聞いた事があるけど何処だっただろうか。上を見て確認しようにも首すらも変に動かせない状態だから確認出来ない。
『右か左、どっちかの腕を少し上げれる?』
「んー…右なら」
『じゃあ上げて。その腕をアタシが掴んだら右膝の三十センチ隣に出っ張りがあるから、そこに足をかけて崖側を向いて』
言われるがままにそうすると足場にした出っ張りが崩れて肝が一瞬だけ冷えたけど掴まれてる腕のお陰で落ちない。
『そのまま落ち着いて出っ張りを足場にしながら上に登って。アタシがちゃんと掴んで引き上げるから』
そう言われてやっと見る事が出来た声主はNoGenderのマネージャー、変な不良をコテンパンにした姫だった。
※※※
「姫!!!何でこんな所にいるんだ!?」
その言葉にズルリと抜けそうになる肩を抑えて右手を腰に添える。
『それはこっちの台詞。この山、ウチの高校の敷地内なんだけど』
一応は。一応と言うのも滅多に人は立ち入らないから、この通り無法地帯。だけどそう簡単には侵入出来る場所じゃ無いし、ましてやこんな崖にぶら下がってたんだもん。普通は有り得ない。ついでに言うと夢ノ咲からは10駅は離れてる。
「分からん!霊感(インスピレーション)を求めるままさ迷ってただけだぞ?」