第24章 学生編・中秋のEnsemble
「うんうん分かる~!お菓子みたいな甘い匂いするよね~」
『ぅわ!凛月君まで!?ちょっとやめて本当に』
ずし、と姫の身体が沈んで位置がズレたのが凄く不快になって顔を上げると、おんぶしてもらうかの様に姫に後ろから抱き着く朔間弟と目が合う。
『は?何お前。姫はお花の匂いだし。つーか男の分際で姫に抱き着くなし。離れろよ』
「いーじゃん別に。姫ちゃんはちんちくりんのじゃ無いんだからさー」
『私のだよ!』
「同性だからって良いポジションで甘やかされてるとか納得いかないんだけど」
『ちょ、ちょっと二人共!アタシを挟んでバッチバチにやり合わないで!?子供?子供なの?いや、匂い嗅ぐから犬猫?待って待って本当にやめて』
-わちゃわちゃ-
「ふふふ」
「嬉しそうじゃな」
「ちょっと妬けちゃうけどね。あんな年相応にわちゃわちゃする姫様、久し振りに見たから」
※※※
「へ~…まさかアイちゃんの正体が君みたいなちんちくりんだったとは」
『きーっ!何なの此奴!すっごい腹立つぅ!!!』
そんな二人の言い合いを抜けてソファに座る智桜姫ちゃんは設置されている扇風機を付けるとギリギリまで顔を近付けて、その身に風を受ける。
「女の子が身体を冷やし過ぎるのは良くないわよ」
『代謝が良いから冷まさないと汗が止まらない』
ふわ、と扇風機の風に乗って薫るのは甘い匂い。お菓子みたいでもあるしお花みたいでもある。なんの香りだろうかと考えていたら池上先輩が思い出した様に話し出す。
「今年のハロウィンはどうする?」
『ハロウィン?』
もうそんな時期か、と面倒臭そうに携帯を取り出すとスケジュールを確認してるのか眉間に皺を寄せながら"すまほ"を操作する。
『私ハロウィンしたーい!コスプレしたーい!』
「僕もー!がっつりアニコスしてライブしたい」
「ぁん?ハロウィンってのは喧嘩祭だろ?」
「…取り敢えず馬鹿トリオは黙っててくれるかしら?話が進まない…」
こめかみを抑えながら深い溜息を吐く池上先輩は三人の話を無視する様に智桜姫ちゃんと話す。
「一纏めかよ」
「仕方無いよね。僕達お馬鹿代表の学校だから」