第24章 学生編・中秋のEnsemble
と思ったらドシッと肩に重みがかかる。
「んじゃ姫さん、ベース宜しくね」
『は?や、ちょっと待っ…』
「姫ちゃんベースも出来るの?」
連弾しようと思ったのに、と言われてアタシも出来るならそうしたい。多分パッと見は分からないと思うけど、この着ぐるみの中は顔中汗だく。変な汗がダラダラと滝の様に流れる。
どうしよう。これは非常にマズい状態。強引だけど渡された以上、弾くしか無いけど弾けば朱音とバレる可能性がある。
『ふぅ…』
いや、落ち着けアタシ。朱音みたいな弾き方をしなければいい。派手なパフォーマンスをせずにお手本みたいな弾き方をして大人しくすればいい。
※※※
-ベェン-
一同「!」
流石姫様。
紫音がベースを姫様に渡してボーカルに入った時はヒヤッとしたけど、朱音様の特徴である派手なパフォーマンスと華やかな音は封印して、まるでお手本みたいな…機械の様な正確さと丁寧な音とパフォーマンスはしない様に後ろに下がってる。
面白みには欠けるけどモブに徹底する算段ね。
(桜音はベースも弾けるのか)
(基本に忠実で機械みたいに正確…)
(じゃがここまで正確と言う事は高度なテクニックを有してると言う事)
大丈夫。自信を持って姫様。
貴女の演技力は天下一品よ。この中で誰一人として貴女を朱音様だとは思ってない。普通にベースが上手な女の子としか思ってないハズ。
『…っ(くっそ!こんな弾き方つまんない!でも我慢!)』
※※※
『暑い!死ぬ!!!』
乱暴に着ぐるみの被り物を脱ぐと頭に巻いてる手拭いを取って顔の汗を拭いて胸元に手拭いを突っ込む。
一同「!?」
「きっ!きききき君は何をしてるんだね!!!」
「オイやめろ!うしちち女!!!目の毒だ!!!」
『じゃあ見なきゃ良いじゃない。ラッキー助平を期待してんじゃないわよ』
顔を真っ赤にして怒る二人に、つん、とそっぽを向くと多少は気を使ってるのか後ろを向く。
「俺はラッキー期待したいから眺めとこっかな~」
「我輩もラッキーは歓迎じゃ」
「んもぅ…淑やかにすれば男性にもモテるのに」
「皆ごめんねぇ?姫さん、羞恥心ってものが無いんだよ」