第24章 学生編・中秋のEnsemble
Valkyrieのライブ中にVIP席にこっそりと戻って来たのは兄者だけだった。し~ちゃんから聞いた話だと一緒に撮影に行った姫ちゃんは戻って来たらVIP席のバーカウンターに入って俺に飲み物を作ってくれるって話だったんだけど。
兄者が戻って来てから、し~ちゃんは"そろそろ準備があるから"ってステージ裏に戻っちゃったし。
「池上先輩からの伝言なのだよ。ドリンクは自分達で好きに飲んでいい、とね」
「え~…姫ちゃんは?」
「あぁ…桜音なら…」
と視線をステージに向けると池上先輩とし~ちゃんとれんくんがステージに立っていた。あれ?あいちゃんも居ない。
「えー…朱音さんと藍音が急遽用事で来れなくなったので…」
どう言う事?と兄者を見ると肩を竦める。
「朱音さんの代わりに僕がベースを担当して………キーボードは謎の猫ちゃんマンが担当します…って言ってもこの箱のスタッフなんだけどね」
そんなし~ちゃんの紹介と同時に舞台袖からステージに出て来たのは頭だけ猫の着ぐるみを被ったヘンテコな格好をした人。首から下はスタッフと同じ格好。にしてもあの悩ましい身体付きの発育の暴力は…
「「まさか!?」」
「藍音さん、疲れて寝てしもーたって聞きましたわぁ」
「藍音の代わりに桜音がキーボードを演奏するらしいのだよ」
えっ。姫ちゃんってただのマネージャーじゃ無かったんだ…キーボード出来るんだ…音楽やってそうなイメージが無かった。
※※※
前半は本当に楽だった。ただ歌う事を趣味にしてる人や趣味でバンドを組んでる人達の対バン。ただ後半に入ってからVIP席に居た朔間兄弟の飛び入り参加や既にライブを終えて疲れてるハズのValkyrieの飛び入り。
凄く楽しいんだけど…楽しいけど高揚に任せてしまえば朱音が出て来るから理性のコントロールが難しい。
-すっ…-
「連弾していい?」
『!』
と凛月君が隣に来たから端によると零さんもこっちに来る。
「凛月~!お兄ちゃんとも連弾しようぞ」
「やだ。兄者は歌ってれば?俺は姫ちゃんとキーボード弾く~」
「そんなぁ…」
「じゃあ朔間さんは僕と歌いましょう」
そんな馬鹿げた言葉が紫音から聞こえた。