第23章 学生編・中秋のNurseryRhymes
「姫様早かったわね」
『連絡もらって急いで来たから』
「お風呂上がり?いい匂いする~」
「凛月、セクハラじゃ」
「うわ、やめろ兄者!俺の癒しなんだけど!?」
姫に対してちょっと馴れ馴れしいなって感じてた朔間兄だけど、いい仕事するじゃないか。そのまま弟の面倒見とけよ、うん。
「早速だけどすぐ動ける?詳細はメールした通りなんだけど…」
『今来たばかりなのに人使い荒いな…でもまぁ藍音の為だから』
『姫~っ!』
『ちょっとちょっと!抱き着くのはストップ。時間が無いから』
そう御預けを喰らって落ち込むとみかたんが慰めてくれる。みかたん本当に良い子。可愛い。
「ワタシは大至急PVに使う衣装を調達してくるから…そうね、30分あれば支度出来るかしら?」
『30分ね。余裕!じゃあ零さん、ちょっと弄らせてもらうのでバックヤードに同行してもらっていいですか?』
※※※
『………(あまり気にしてなかったけど…この人とんでもない美貌の持ち主だな。肌も綺麗だし下手に弄らない方が良いかも)』
メイクブラシを構えながら顰めっ面で我輩の顔を眺める智桜姫ちゃんはカラフルなパレットを閉じて別のパレットを取り出すと自分の手に色を置いて確認しながら我輩の顔にも色を乗せる。
『このくらいでいっか』
「???NoGenderみたいなお化粧しないの?」
『多分逆光で殆どシルエットになるからお顔はあまり弄らない』
凛月の質問にそう答えるとスケッチブックを手に取って、そのスケッチブックに描いてある絵と我輩を見比べる。
「兄者の癖毛鬱陶しいよねぇ?毟っても良いんだよ?」
「凛月っ!?」
『癖毛はチャームポイントだよ。この絵の男の子もちょっと癖毛っぽいし………本当良く特徴掴んでる』
少し嬉しそうな、でもとても悲しそうに微笑む。智桜姫ちゃんはこのモデルになった人物を知っている様な雰囲気がある。
※※※
『丁度いい夕焼けー!』
天は私に味方している、とカメラを高らかに掲げながら海に向かって元気よく叫ぶ実菜未、曰く藍音。
演者は姫様と零。撮影係にワタシと藍音。
他の皆は18時からValkyrieがライブをするからその準備。