第22章 学生編・中秋のSoundTrack
投げた犯人であろう朱音くんはステージの上で、うん…所謂ヤンキー座りをしながらグラスに入った水にストローを刺して、そのストローをマスクの内側に通して飲んでいた。
飲み物を飲む時くらいマスク外したら良いのに。
『撮影も急だし俺この後バイトだから、もたもたしてる時間ねぇんだよ』
「だからちゃんと助っ人呼んだのよ~?」
「まぁValkyrieと朔間兄弟なら安心だけどさ」
と紫音くんが言うと朱音くんは呆れた様に溜息を吐くとステージから飛び降りて、此方に来ると受付にグラスを置いて我輩達をそれぞれの撮影に使うであろうカメラ機材の前に案内する。
『手伝って貰うのはカメラワークなんだけど…一番動くメインカメラは朔間さんにお願いしてもいいですか?』
「我輩?」
『メンバーから怪力って聞いたんで。コロ付きと言ってもメインカメラは重いし』
焼肉の時の話は朱音くんに伝わっているらしい。
『何処にどう動かすかはこの紙見ながらでお願いします。斎宮と影片は左側。朔間は右側』
「え?俺も!?」
とそれぞれにカメラの説明をして紙を渡すとステージに軽々と飛び乗るとベースを肩にかけてセンターに立つ。
「そう言えば君は体育祭の後に手首を骨折したと聞いたんだが…もう良いのかい?」
確かに。
『骨折くらい二週間あれば完治は普通だろ』
智桜姫ちゃんもそうだがNoGenderの皆の普通って少しおかしいと思う。
※※※
『あ゙ー…あー、あー………あれ?おい藍音、音くれ』
『はいはーい』
喉の調整をする朱音は思った声が出ないのか藍音…つまり下宮に音をもらって調整をする。
『あーーー…ん、OK。さんきゅ藍音』
『ダーリン為なら何でもするよっ』
「ぶっつけ本番?」
「カメラワーク大丈夫かァ!?」
『ぶっつけ本番で良いだろ。一回で決まったら皆に給料払えよ』
「一回で決まったらね~」
そんなやり取りをした後に朱音がマスクを外すとNoGenderの雰囲気が変わって空気が張り詰める。この人達はオンオフの切替に激しく差がある。今回の新曲は朱音がメインボーカルを努めるとは池上先輩から聞いていだが…流石に動画を撮影する時はマスクを外して歌うらしい。
「………」
「影片、ちゃんと手伝いたまえ」