第22章 学生編・中秋のSoundTrack
動画製作の演奏場所はいつもライブハウスIKEなんだけど、曲に合わせたセッティングは既に昨日のうちに終えてるらしい。先読みの力でもあるのか早くに完成するのが分かってたみたい…って言っても大体、一日~二日でいつも完成するから分かって当然か。
「よっしゃ行くぞガキンチョ共~」
『あ、ちょっと待って』
『「「?」」』
ぎゅっ、とサラシをキツく締める。
「てめっ!?何やって…!」
「アカネさん本当羞恥無いよね」
『そんなに締め付けて大丈夫?歌う時キツくない?』
『ちょっと多めに休憩取らせてもらう事になるかも知れねぇが問題無ぇ。何か俺の勘がちゃんとしとけ、って言ってんだわ』
これはもう勘と言えるものか分からないけど空音の行動の予想は大体つく。たまにド天然の原爆落とすから油断出来ない。
※※※
「すまんのぅ。迎えまでしてもらって」
「いいのよォ。お手伝いをお願いしたのはこっちなんだから」
と高級車の運転をする空音さん…池上先輩は楽しそうにハンドルをきる。まだ昼過ぎだし凄く眠たいけど学校も仕事も無い休日の昼間から兄者が出掛けるのは、ちょっと気になって不本意ながら同行した。
「手伝いって何?」
「これからNoGenderの新曲のPV製作と言う名の動画製作をするんだけど、そのお手伝いを頼んだの」
いつもは身内だけでやってるんだけど大変だから助っ人を頼んだの、とバックミラー越しにニコニコしてる姿が見える。NoGenderのPV製作現場か…確かにちょっと興味ある。NoGenderの動画は一通り見てるし曲も良いけどPVがとても綺麗なんだよね。
「因みに今回は藍音の希望で珍しく朱音様がメインボーカルするのよ」
「「どっちの声で?」」
「それは現場に着いてからのお楽しみ」
※※※
「皆お待たっん゙ごっ!?」
一同「………」
エントランスで斎宮くん率いるValkyrieも合流して箱内に入れば、何処から飛んで来たのかドラムのスティックが綺麗に池上先輩の額に命中する。
「ちょ、アカネサン…オレのスティック雑に扱うのやめてくんねぇかな?」
「楽器は大事にしよう?アカネさん」
「ついでにワタシの事も大事にしてくれる!?」
これから撮影なのに傷が出来たら困る、と額を抑える。