第21章 学生編・残暑のNoGender(幕間)
「む…済まない朔間先輩…俺の鍛錬不足だ」
「致し方無しじゃのぅ…我輩、疲れる事は好きじゃないんじゃが、もう陽は落ちておる。元気いっぱいじゃから簡単には負けはせん」
「か弱いアイドル風情が言うじゃねぇか!」
勝ちは当然ゴトちゃん、とNoGenderの面々は誰もが自信あったと思う。勿論アタシもそう思ってた。この脳筋ゴリラくそマッチョに対して零さんは華奢だし。だけど手を組んだ瞬間にゴトちゃんの表情が変わって…割と結構いい勝負してたと思うんだけど。
『「「嘘…脳筋ゴリラが負けるなんて…」」』
「やるじゃねぇか吸血鬼ヤロー!」
「我輩まだまだ若者には負けんよって」
「いやテメェ、オレと同い年だろ…おーい、姫サン。どーするよ?アカネサン居ねぇからオレ達の負けになっちまうけど」
『いや、アンタ現役の鳶職よね?何で負けてんの?見掛け倒し?』
※※※
黄音くんに辛辣な文句を垂れると黄音くんを押し退けて我輩の前に智桜姫ちゃんが座り、制服のブレザーを脱いでブラウスの袖を捲る。
『アタシ左利きなんで左でいいですか?』
「女人相手はやりにくいんじゃが…構わんよ」
『みい、アタシのスクバからテーピング取って』
『え?マジでやるの?治ってばかりでしょ?』
『負けるのは嫌』
割とクールなイメージを持ってたけど意外にも負けず嫌いな一面があるとは。グルグルと肘から手首にかけてテーピングを巻くと左腕を出す。
「病み上がりじゃろう?無理するのは懸命じゃないと思うんじゃが」
『お構いなく。そんなにヤワじゃないですし』
そんな様子に渋々腕を組んだ瞬間、冗談を言えなくなる。相当、強い。正直普通の女人レベルでは無いし普通の男よりは全然強い。女人相手に本気を出すのもどうかと思うが負けては格好が付かない。
※※※
『いや凄い。アタシの左に勝った人、人生で二人目』
と小さく拍手をしながら可笑しそうに笑うと腕に巻いたテーピングを取る姫さん。あの脳筋ゴリラである黄音でさえ姫さんの左には勝てなかったのに。手首もまだ完治してないとは言え、ほぼ治ってるから本調子ではない、と言う事は無いハズ。
「見掛けに寄らぬ腕力。おったまげたわい」
『お互い様ですよ』