第18章 学生編・残暑のValkyrie(幕間)
保健室から戻って来るのが遅かった事。言われてみれば不可解な点はある。そして月曜日のあの嘘吐きな笑顔。
「じゃあもしかして…その折った原因っつーのは…」
「そう。俺達がアカネさんに飛び付いた時だと思う」
うっわ…キツい…
私達皆…アカネの事が…姫の事が大好きで…その何気無いスキンシップが結果的に怪我をさせたとか…でも本人あんなんだけど凄く気ぃ使いで優しいから…もし本当にそれが原因なら私達の事を気遣って断固として本当の事は言わない。
いくら姫が強くて頼りがいがあって男前でも…やっぱり私と同じ女だから脆い部分はある。
「心当たりがあるようだな…まぁお前が一番、朱音様と一緒にいるもんな」
「下宮としても…"アイネ"としても」
-バサバサバサッ-
『「「「!?」」」』
「あ…と…おれ達は帰ろうとしただけやねんけど…」
※※※
別に全ての話を聞いてた訳じゃない。でも多分、一番耳にしてはいけない重要な部分を僕達は聞いてしまった。
「そっか…話に夢中になり過ぎて忘れてたけど俺達だけじゃなかったんだった…」
「御免、下宮」
『………いや、別にいいよ。まだ私なだけマシ』
腕を組んで壁にもたれかかって俯きながら言葉を発する下宮は、いつも馬鹿みたいに明るい人懐っこさが無い。影片を見る度にタックルと言う名の抱き着く素振りもしない。こんな下宮を見るのは初めてだし影片ですら戸惑っている。
「え…藍音さんが実菜未さんって…ほんまなん?」
『………』
苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ深く深呼吸をするとパッといつもの調子に戻る。
『そうだよー!吃驚した?御免ね?驚かせるつもりは無かったんだけど』
「ワタシ達が勝手に喋ってたのを運悪く聞いちゃったって感じだから二人が気に病む事は無いわ」
「巻き込む形になってすまねぇが此処で聞いた事は秘密にしといてくれねぇか?」
「勿論それは重々承知さ。だが…知れて良かったと思う」
秘密というものは隠すから秘密であって、その秘密を共有する人物は少ない方がいい。だが時と場合によってはその秘密を守る協力者は多い時の方が良い場合もある。
「NoGenderの秘密を知りたがってるモノは多い」