第2章 イライ・クラーク
『じゃあ、よろしくお願いします。』
そう私が言ったがイライくんが動く気配はない。
……?どうしたんだろう?私は不思議そうにイライを見る。
すると、イライは右腕を私の方にのばし手のひらで頬に触れる。
『千代ちゃん。ちょっとじっとしててね。』
え、なに?何が起きてるの?
すこしパニックになっている私を他所にイライは顔を近づけてきた。
近っ!このままでは唇が当たっちゃ…!そう思った瞬間、
〈ぺろっ〉
イライが舌で私の唇のすぐ横を舐めた。
『うん!取れた。千代ちゃん。朝ごはんが着いたままだったよ?僕今虎だし、いいかなと思って舐めちゃった。』
へへっとイライは笑うが、内心キスされるのではないかと期待していた自分に気づき、恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
それを見てイライが
『もしかして……キスされるかと思った?』
とにやにやしながらこちらを見てきた。
あまりの恥ずかしさに逃げたくなった私は
『え、えと、イ、イソップくんが待ってるから早く行かなくちゃ!!』
と小走りに庭園を去ろうとする。
そんな背中を見ながら
『フフっ、可愛いなぁ。キスなんてしないのに……。…………まだね。』
と言ったイライの声は私には届いていないのだった。