第2章 イライ・クラーク
『みんなー、朝なのー、起きてなのー』
遠くの方から元気な声が近づいてくる。
『千代さーん、起きてなのー。』
トントンとドアを叩かれ、私は眠たい目を擦りながらドアを開けた。
『おはよう……ございます……』
まだ少し夢の中にいる私はドアを叩いた人物に挨拶をした。
『おはようなの!エミリーから話は聞いたの!エマはエマ・ウッズなの。千代さん、よろしくなの!朝ごはんの時間だから着替えが終わったら食堂に来て欲しいなの!』
『分かりました。すぐ行きますね。』
要件を言ってエマちゃんは次の人を起こしに行った。
生エマちゃん、すごい可愛い……。
さて、支度しなくては……しかし服なんて、私は身一つで来たのにどうしたらいいんだろうかと思い部屋の中に戻ると、机の上に箱があった。
箱を開けてみると中には色違いの服が何着かと手紙があった。手紙には荘園の主よりと書かれていた。
出たよ荘園の主……そう思いながら、入っていた服を見るとなかなか可愛いものだった。ちょっとスカートの裾が短い気がしないでもないけど……。
『とりあえず着替えて朝ごはん食べに行こ』
食堂へ向かうとそこにはもう何人かが座って食事を始めていた。
弁護士、カウボーイ、医師、探鉱者、納棺師、調香師……やはり全員知っている顔である。
他の人はまだなのだろうか?
エミリーが私が来たことに気づいたようでこちらに話しかけに来てくれた。
『おはよう。昨日はよく眠れた?顔色も良さそうね。』
『は、はい!昨日はありがとうございました。お陰様でゆっくり寝られました。』
『そう、なら良かったわ』
フフっとエミリーが笑い、パンパンと手を叩くと皆がこちらに注目する。
『みんな、昨日荘園にきた千代さんよ。分からないことが多いと思うから助けてあげてね。』
『えと、千代です!よ、よろしくお願いします。』
しどろもどろになりつつも自己紹介する。
『よろしく、可愛いお嬢さん。』
カウボーイが近くに来て私の手を取り、チュッと手の甲にキスをしてきた。
『ひゃ、ひゃい』
びっくりして顔が真っ赤になり呂律も上手く回らなかった。
そうこうしているうちに皆、食べ終わったのかぞろぞろとこちらに集まってきた。