第1章 始まり
『はい、ホットココアよ。火傷しないようにね。』
エミリーさんはそう言ってココアと毛布をくれた。
『ありがとうございます。』
先程の人と一緒でこの人もやはりあのエミリーにしか見えない。
しかし、あれはあくまでゲームの世界だ。だが実際に今目の前にいる……。そんなことがあるんだろうか……。
ココアを飲みながら、エミリーをじっと見てそんなことを考えていると、エミリーが口を開いた。
『にしても、どうして森の中をそんな格好でうろついていたの?』
……わからない。本当にここが第五の世界だと仮定してもなぜ自分がこの世界に迷い込んだのだろう?
エミリーの問になかなか答えず沈黙したままでいる私を見て、
『まあ、いいわ。ここには訳ありの人も多いから。』
そう言ってエミリーは優しく微笑んだ。
『とりあえず……そうね。あなた名前は?』
『えと、佐伯 千代です。』
『そう千代って言うのね。私はエミリー・ダイアー。医師よ。よろしくね。』
エミリーの優しい雰囲気に混乱していた頭がだいぶ楽になった。
『ここは部屋だけは沢山あるからそこで今日は寝ていいわよ。歩いて疲れたでしょう?ゆっくり休むといいわ。』
そう告げてエミリーは部屋から出ていった。
1人になった私は部屋の中を見回す。
ベッド、クローゼット、机……質素な作りの部屋だな……。
他のサバイバーの部屋もこんな感じなのだろうか。
しかしなぜ自分はゲームの中に迷い込んだのだろう?
話を聞く限り、やはりここは第五人格の世界と考えていいだろう。
あの手紙……一体あれは誰から送られてきたのだろうか。
そんなことを考えてはみたものの、まあ分かるわけがなく、やはり疲れが溜まっていたのか眠たくなった私はどうせなら楽しんでしまおうと思いつつ、眠気に任せそのまま眠りに落ちた。