第3章 ナワーブ・サベダー
朝食をすませ部屋に帰ろうとした私にエマちゃんが声をかけてきた。
『千代さん!今手空いてるなの?』
『どうかしましたか?』
『実はナワーブくんがさっき起こしに行った時起きてくれなくて、もう一度起こしに行こうと思ったんだけど…エマ今日最初から試合入ってて困ってるの…。もし千代さんが良ければ起こしてあげて欲しいなの。』
『なるほど。そういうことなら全然構いませんよ。』
可愛いエマちゃんの頼みだ。私は笑顔で引き受ける。それにナワーブくんの寝顔がみれるかもしれないし……へへっ
『ありがとなの!じゃあ頼んだなの!』
そう言ってエマちゃんは試合会場のほうに走っていった。
ナワーブくんか……。思ってたより時間にルーズなんだな。可愛いけど。
そんなことを考えながらナワーブくんの部屋に向かう。
〈コンコン〉
部屋の前に着いた私は扉を2回ノックした。
『ナワーブくん、朝ですよー。』
……しかし返事はない。
どうしよう。ドア…開けてみる?いや、でもわるいよなぁー……。
そんな感じで葛藤すること1分。意を決して開けてみることに決めた。……決して寝顔みたさに決めたわけじゃないんだからね!
〈カチャ〉
半分ほどドアを開け中を覗く。部屋の中は薄暗く、ベッドと思われる場所は人一人分の膨らみがあった。
『ナワーブくん』
試しにその場で一度名前を呼んでみた。しかしナワーブは微動だにせずそのまま眠り続けている。
………失礼します。
私は部屋の中に入る。ベッド横に行き、もう一度名前を呼ぶ。
『ナワーブくん、朝だよ。起きてくださーい!』
すると突然、布団の隙間から手が伸び私の手を掴んだ。その手はそのまま私をベッドの中に引きづりこむ。
『きゃっ!!なに!?』
思わず瞑っていた目を開けると、ナワーブくんがニヤニヤしながら私を見ていた。そして何故か抱きしめられている。
『ちょ、起きてるじゃないですか!!ていうか離してください!///』
あまりに近い位置に彼の顔があり、思わず胸が高鳴る。
『へへっ、おはよ。残念ながらこの手は離してあげられませーん。』
ナワーブは悪びれることも無く笑う。
『…っ!おねがっ…恥ずかしいからっ……!///』
顔を真っ赤にする私を見てナワーブが
『へへっ、こんなんで恥ずかしがってたらこの先大変だな。』
と言った。
![](/image/skin/separater50.gif)