第7章 天喰くんのお部屋
〜5部屋目 相合傘〜
学校の正面玄関から空をちらっと覗く。
ー 失敗した…本当に降ってるなんて…
帰ろうとしたら傘が無いとずぶ濡れになる程度の雨が降っていた。
「…リルル?」
止むまで待ってようか悩んでいると、環くんがちょうど帰るところみたいで声をかけてきた。
環くんとは、小さい頃からの幼なじみで好き、だったりする。
「…帰らないのか?」
『あ、うん、帰りたいんだけど…傘忘れちゃって』
「…それなら、傘、入る…?」
『…えっ?』
環くんから予想外の提案だったから思わず驚いてしまった。
「…ごめん、嫌ならいいんだ…幼なじみだからって良いことと悪いことがあるよな…」
『違う違うっ、驚いただけっ』
幼なじみに対してもこんな考えだから甘い展開なんてないと思ってたけど、相合傘なんて急すぎる。
『…ありがとうっ、環くん//』
「…っ//」
環くんの照れた顔は、傘を差す姿で見えなかった。
傘を差し出されて中に入る。
「じゃあ、帰ろうか…」
『うんっ//』
帰り道は、たわいもない話をした。
ヒーロー科の彼は、雄英高校のビッグ3。
小さい頃から凄い個性だと思ってたけど、雄英高校のトップにまでなってしまうなんて、本当に凄い。
「…どうか、した?」
『…んーん、なんでもないっ』
ふと環くんの肩が濡れてることに気づいた。
『環くん、肩、濡れてるよっ…』
「これくらい、問題ない…」
傘はそんなに大きくないから、結構くっつかないと濡れてしまう。
私はこの際、どうなっても!と半ば無理矢理、環くんの腕に抱きついてみた。
「…リルルっ⁉︎// 」
『…ご、ごめんっ、これじゃ歩きにくいよねっ…』
私がそっと離れようとすると環くんが阻止した。
「…いや、そのままでいい…//」
そう言われて、また腕にぎゅっとしがみつく。
自分からしたこととはいえ、恥ずかしすぎて顔が赤くなる。
でも楽しい時間はあっという間で私の家の前に着いてしまった。
『傘、と送ってくれてありがとうっ///』
「…たいしたことない…」
『じゃあまた、明日っ!』
「…あぁ、また明日」
環くんが帰る頃には、雨はあがっていた。
5部屋目 相合傘 END