第4章 轟くんの屋根裏
焦凍様は火傷を負い、私にはどうすることも出来ず、会いに行っても会ってくれなかった。
だけど少しでもそばにいたくて、焦凍様のお屋敷に通った。
もちろん学校に通ってはお屋敷へ、そんな生活が中学に入っても続いた。
会話はないけれど、姿が見れるだけでも嬉しかった。
でも焦凍様がだんだん男の人になるたびに、この気持ちが高鳴ると同時に焦凍様の気持ちが気になって仕方がなかった。
私は小さい頃に許婚と聞かされていたけれど、焦凍さんは聞かされているのだろうか…
私のことを焦凍さんはどう思ってるのか、知りたくてたまらなかった。
そんな時、お屋敷へ招かれてとある部屋を通った時のことだった。
「…あいつが俺の許婚?」
「…そうだ」
「……なら結婚なんて、しねぇ…」
突然聞こえてきた会話だった。
『…っ⁉︎』
「…あんたが選んだ女だろ、絶対しねぇから」
ガラッと障子が開いて、焦凍様と目が会う。
「…いたのか」
『…も、申し訳ありません、聞くつもりはなくてー』
「…お前も、あいつに無理矢理連れて来られたんだろ」
『…えっ』
「好きでもない男のところによく通えるな…」
『…っ⁉︎』
「…もうここには来るな」
そう言うと焦凍様はその場を去っていった。
あの頃の焦凍様の面影はなかった。
冷たい視線に何も言えず、心にぐさっとナイフが刺さったような気がした。
『…わ、たし…は…』
私はその場で座り込んで泣くしかなかった。
掟で、相手方が婚約しないと言われた場合、嫁ぐのは白紙になり、私は別の人の元へと行かないといけない。
逆らうことは許されず、私はただ泣くことしか出来なかった。
その当日のことー。
家の前に1台の車が止まる。
「…君を降るなんて、ひどいヒーローもいたものだね」
『……っ』
「…俺なら絶対にそんなことしない…」
急に肩を抱かれてびくっとする。
なんだかじろじろと見られている感覚がして気持ち悪い。
他の人に抱かれるくらいならいっそのこと死んでしまおうか、なんて考えていた。
あの人のそばにいれないなら意味なんてない。
でも、一目でいいから、焦凍様に。
焦凍様…会いたい…会いたいですー。
その時だった。