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【黒子のバスケ】年上彼女 file1

第2章 first quarter


 練習を見学していた私に、武内先生が、遣いを頼む、と言い出したのは、私が体育館を訪れてから暫く経っての事だった。
 せっかく来たのだし、もう少し彼等のために何かしてあげたいと思っていた私は、それを承諾する。どうやら、部室でミーティングをしていた際に、書類を忘れて来てしまったのだとか。

「相変わらず、少し抜けてますよね。」

 なんて言えば、ほっとけ、と頭を小突かれる。そんなやり取りをしたのが、彼等が休憩中の事だ。体育館の中でわらわらと水分補給やストレッチを行っている部員達を横目に、私は体育館を後にした。


**


 卒業生な上に、自分も運動部に所属していた為、バスケ部の部室の場所は知っている。部室の鍵の一つは職員室に置かれていて、誰でも持ち出す事が出来るのだけれど、今回、私は顧問に渡されているもう一つの鍵を持って部室へと向かっていた。

 部室に到着した私が、鍵をあけようと鍵穴をそれで回してみるが、開いた感覚がない。否、むしろ最初から閉まってなどいなかったのだ。
 不用心だな、なんて思いながらその扉を開けた時、私は鍵がかかっていなかった理由を知る事になる。

「・・・笠松君?」
「あ、あ・・・え、はい。」

 部室の中、笠松君が一人で自分のロッカーだろう場所を漁っていた。何をしているのか、と聞いても良かったのだけれど、今は部活中。それを考慮すれば、彼がここにいる理由等、簡単に検討が付くだろう。

「忘れ物?」
「は、はい・・・。」

 彼が手にしていたのはテーピング用のテープ。私は、固まったままロッカーの前から動かない笠松君を横目に、武内先生に頼まれていた書類を見つけ出す。あった、あった、なんて呟きながらその書類を手にした私は、未だ動かない笠松君に声を掛けた。

「行かないの?」
「いい、い行きます!」
「じゃあ、早く行くよ。鍵、閉めなきゃ。」
「はは、はい!」

 カクカク、と両手両足を同時に前に出しながら笠松君は私の後をついて部室から出て来る。一緒に戻る?と声を掛ければ、他所を向いたまま、暫く目を見開いて固まっていたけれど。それを肯定と取った私は、笠松君を促して体育館へと足を向けた。

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