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【黒子のバスケ】年上彼女 file1

第2章 first quarter


 私が何を聞いても、はい、か、いいえ、しか答えない笠松君との会話はすぐに尽きてしまう。正直、ここまで過剰に反応されると、逆に嫌われているのではないかと思う程。
 彼は、この女子も入り混じる学校で、本当にちゃんと生活できているのだろうか。ああ・・・もしかすれば、もう少し慣れれば話してくれるようになるのかもしれない。根気良くいくしかないのかな、なんて私が彼と良好な関係を築く為に思案している最中の事だ。

「あ、ああ、あの・・・」
「ん?」

 珍しく話しかけてくれた、否、初めて話しかけてくれたと言っても過言ではない、その彼の言葉に、私は視線を右上へと移した。

「ク、クッキー・・・ああ、ありがとう、ございました。美味かった・・・です。」
「そう?そう言ってもらえると嬉しいわ。まあ、私が作ったんじゃないんだけどね。」
「え、え、あ・・・でも、先輩の店の・・・です、よね?」
「そうそう。コーヒーとか紅茶に付けて出してるものなの。」
「・・・そう、なんですか・・・。」
「笠松君は、甘いものとか大丈夫?」
「あ、え、はい。大丈夫、です。」
「そっか。本当はプリンを持って来たかったんだけど。さすがにこの人数分用意できなくて。ゴメンね。」
「あ、や・・・別に、その・・・美味かったっす、から。」

 笠松君は、そう言って目を伏せた。もちろん、向こう側を向いたまま。だが、私は初めて会話らしい会話が出来た事に少し浮かれ、その表情はだらしなく緩んでいたと思う。彼と話をする事が、こんなに嬉しい事だとは思わなかった。まるで、野良猫を手なずけたような心境である。

「あ、佳奈。・・・さん。」

 丁度、笠松君との会話が途切れた時。体育館へと続く表廊下へ差しかかった時の事だ。ふいに、少し離れた場所から私を呼ぶ声が聞こえた。

「あ、真也。どうしたの?」
「いや。クッキーの礼、まだ直接言えてないなと思ったんだけど・・・すいません、主将と話してたんですね。」
「いや、いい。俺は先に行く。中村もさっさと来いよ。練習始んぞ。」

 まるで、先程まで話していた人物とは別人のような貫禄で、笠松君は由梨の弟君、否、真也に告げると、そのまま体育館の中へ入って行ってしまった。

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