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【黒子のバスケ】年上彼女 file1

第2章 first quarter


「今日は!佳奈さんのために戦います!」

 武内先生に言われるがまま、三人に頑張れと声をかけてベンチへと足を進めた私の後方で、由孝君がそう叫ぶ。この彼の声がきっかけで、私は他の部員達からも佳奈さんやら、佳奈先輩なんていう名前呼びが定着してしまう事は、今の私は知る由もない。


**


 ピッと、甲高いホイッスルが試合開始を告げた。先程、小堀君が言っていたように、ミニゲーム形式の練習を行うらしい。武内先生は大まかな指示を出して試合を開始させた後、すぐさまベンチへと腰掛けに来た。

「監督がそんなにのんびりしてて良いんですか?」
「のんびりしている訳じゃない。何か気付く事があれば呼びだして指示を飛ばす。俺がやる事はそれくらいだ。これは、アイツらが自分で考えて動く練習も兼ねているからな。」
「へぇ。」

 よく分からない、と私が続ければ、武内先生は、だろうな、とからかうように告げた。
 三人一組のチームで、勝ち抜き戦。負けたチームは何連敗がすると、コートから降ろされて筋トレ等のペナルティが課せられる。コート数が限られているため、試合のないチームは審判を担当したり、作戦会議をして待ち時間を過ごすようだ。
 バスケの試合は、クオーターの間にインターバルやタイムアウトが挟まるので、この空き時間をどう過ごすかも、試合に向けての練習の一つらしい。後者に関しては、集中の仕方や切替の仕方と言った精神論なので、指導という指導もできないのだろう。己で感じて学べってか。

 私は、開始されたミニゲームへと視線をやり、その勝敗を見守る事にした。今、コートの中には笠松君率いるチームが立っていて、その気迫に思わず固唾を飲んでしまう。

 なんだかんだと指示を飛ばしたかと思えば、自分でボールを持って切りこんで行く。周りを見て、パスを出し、敵の状況によっては自分でスリーポイントもきめてみせる。まさに、チームの柱と言う表現が似合うのかもしれない。時には強く怒鳴り、時にはよくやったと褒めてみせる。
 そんな彼を見ていると、本当に、彼はあの時、コートに座りこんでしまっていた彼なのだろうか、と疑問に思ってしまうほど・・・。

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