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【黒子のバスケ】年上彼女 file1

第2章 first quarter


 それにしても、なぜ笠松君はここまで私に余所余所しいのだろうか。初対面だと言う事を考慮しても、彼と目線が会ったのは、私が体育館に来て彼等を見つけた、あの瞬間だけ。あり得ない。何か笠松君の気に触るような事をしてしまったのかと、少々困ったように彼を見遣っていた時だった。

「山下先輩。」
「ん?なに?」
「笠松の事は気にしないで大丈夫ですよ。」
「と、言うと?」
「極度の女性嫌いって言うか・・・」
「べ、別に嫌いなわけじゃねえ!」
「佳奈さんのお美しさに照れているだけですよ。高校生にもなって、女性とまともに会話ができない、ピュア松なんて異名を持つ野郎ですから。さ、笠松の事なんか気にせず、この運命の出会いを果たした俺達の未来について語り合いませんか?」

 私は由孝君のお誘いを華麗にスルーし、再び笠松君へと視線を向ける。彼はちらりと私と見遣ってから、すぐに顔を真っ赤にして視線を逸らした。なるほど、照れてるんだね。
 彼の行動に納得した私は、乗りだすようにして床に手を付けて、小堀君の後ろに隠れた笠松君の顔を覗き込んだ。冷たくあしらわれているならともかく、ちらちらと向けられる視線にこの態度。まるで警戒心の強い野良猫である。

「・・・っ!?」
「ねぇ、笠松く、・・・っ痛い!」

 私がゆっくりと彼に這い寄ろうとした時。背中を板のようなもので叩かれる衝撃が走った。

「うちの部員に手を出さないで貰おうか。山下。」

 余りにも聞き覚えがありすぎる声。私は恐る恐る首だけを回して背後に立った人物を見遣る。そこには、やはりと言うべきか。私の想像したご立派な腹が、否、在学中に大変お世話になった先生が、立っていた。

「た、武内先生・・・?」
「久しぶりだな。元気そうで何よりだ。」
「先生もお元気そうで。安心しました。」

 先生の姿を見るなり立ち上がった私は、さわさわと何か御利益がありそうなその腹を撫でながら言葉を返す。妊娠何カ月ですかー?なんてネタはもう飽きるほど使ってきたため、私はただ普通に会話をしながら先生の腹を堪能していた。一方の先生は呆れたようにため息をついて、やめんか、と元気なく告げるだけだったのだけれど。


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