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【黒子のバスケ】年上彼女 file1

第2章 first quarter


 私が思わず呟いてしまった理由。それは言うまでもなく、あのおチビ君が、ここに、このバスケ部専用の体育館にとどまっていたから。それどころか、彼の表情は引き締まっており、あのどん底に突き落とされた時のような戸惑いも、不甲斐なさもない。キリッとしたその表情は、まるで後の二人に慕われている主のようにも見える。
 その光景を見た私は、何度も心の中で安堵の言葉を呟いていた。

 良かった、本当に・・・良かったよ。

 その瞳には思わず涙が溜まってしまう程、私は彼がここに居る事を心から喜んだのだ。


 そんな時、ふとおチビ君の視線が此方へと向いた。あ、ヤバイなんて心の中では焦ってみたものの、私は彼から視線を放す事が出来ず、ただぼんやりとその強い視線を見つめ返していた、のだけれど。

「・・・っ!」

 急に顔を真っ赤に染め、何故か慌てて視線どころか顔をそらすおチビ君。その慌てように、私までも少し慌てて自分の姿を確認してしまう。いや、別に変な格好してる訳じゃないよね、なんて一通り自分の格好を眺めてから視線を上げた時だった。

「・・・誰?」

 此方に背を向けていた二人が、私の存在に気付いたようだ。そのうちの一人が、おチビ君に尋ねているようだけれど、彼は相変わらず顔をそむけたまま、横に首を降っている。

 ここまで盛大にバレてしまっては、声をかけずに去るのも気が引ける。かと言って、おチビ君がバスケを辞めてしまったのではないか、と勝手に不安がっていた事など告げられる訳もない。

 どうするべきか、と私が少々思案しているうちに、此方へ来ようとしていたイケメン風味の男の子を、おチビ君が腕やら服やらを掴んで必死に止め、その隣を何事もなかったかのように、人の良さそうな男の子が歩いてやって来ている。

「何か御用ですか?」

投げかけられた声はとても優しいものだったのだけれど、私は近づいて来た彼の身長による威圧感に少々戸惑ってしまった。

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