第4章 邪魔者
「…お前の考えていることが、
よくわかりましたよー。」
こんな街中で、痴話喧嘩なんかしたら
ヤバイもんなぁ~
それこそ、スキャンダルだ。」
「智……ちが…」
「手を放せよ!
叫ぶぞ!!
俺の恋人は、将来有望なサッカー選手
だって!!!」
「----!?」
瞬間、ビクッと翔の手が離れた。
「俺をバカにするな!!
そんなサッカーが大事なら、
おとなしく合宿所に帰れ!
お前みたいな、俺の事とサッカーの事を
同時進行で進めたいヤツと付き合えるほど、
俺は単純な男じゃないんだよ!」
怒りのまま言い捨てると
智は翔の身体を突き飛ばし、
方向を変えた。
「智……待って…」
追ってこようとする翔に、
背中でキツイ一言を告げる。
「これ以上つきまとったら、
ストーカーたって叫ぶぞ!!!!」
「……………!?」
背後で、翔の足音が止まる。
それでも智は、振り向きもせず、
ズンズンと歩いていく。
冗談じゃない。
確かに、カミングアウトはするなと
言ったけど…。
でも…………………
こんな街中で、周りは見も知らない
他人ばかりなのに、いったい誰が自分達を
気にするのだろう?
人前で手は繋げない…
甘い言葉も囁けない……。
そんな恋人など、いったい何の価値が
あるのだろう?
薄暗い部屋の中で、ひっそりと人目を忍んで
逢瀬を繰り返すような、そんな惨めな立場に
甘んじるなんてまっぴらだ。
『そんなのただの我が儘じゃないか…』
と、言われようと
どうしようもないんだ。
これが自分の考えなんだから……………。
例え、翔が心から俺を愛していても…、
いや、愛しているのであれば、尚のこと
やっぱり二番目に置かれるのはイヤなんだ!!
そんなの堪えられない!
絶対に耐えられない…
耐えられる訳がないだろう………