第4章 邪魔者
智はムーッと顔をしかめる。
「なんでそんな昔のこととか知ってるんだよ。」
「え……?」
「例えば、小学校の頃のこととかさ……」
「ああ、一緒の小学校だったんだよ。
偶然なんだけどさ……」
「俺は、知らなかった。
サッカー部のマネージャーが、
幼馴染みだったなんて……」
完全に拗ねたように言う智に
翔は驚きの視線を向けた。
「幼馴染みぃ~?」
「そうなんだろ…?」
「幼馴染みってほどじゃないよ。
幼稚園は違ったし、小学校の3~4年の頃、
同じクラスになったけど、
仲がいいグループは違ったんだよ。
しかも、学期の途中で、
あいつ喘息の治療のためとかで引っ越したから、
ほとんど話をした記憶もないんだよ。」
「引っ越しした後、付き合いはなかったの?」
「ないね。あ…、確か担任の先生がみんなで
励まそうとか言い出して、クラス全員で
手紙を書いたことがあったっけ…
まぁ返事がきたから、何度か出したけど……」
「じゃあ、連絡取り合ってたんだ。」
「連絡ってほどじゃないよ。
向こうからはけっこうきてたけど、
俺、文章とか作るの苦手だから、
暑中見舞いと年賀状ぐらいしか、
書かなかったし…
それだって、2~3年も続かなかったよ。」
「ホント…?」
と不安げに見上げると、翔はクスクスと笑う。
「何だよ。妬いてんの?」
「ち…違うっ!」
そこでそっぽを向いてしまうあたり
もう嫉妬丸出しの証拠だと思う。
なんとまぁわかりやすい性格なのだろう。
「まぁーねぇ…確かに、ちょっとは
伊野尾のこと気にしてるのは事実だよ。
でも、それって、持病の小児喘息の事が
あるからかねー。
本人は完治したって言ってるけど、
今でも激しい運動はできないらしいんだ。
だから心配なんだよ。
だって、サッカー部のマネージャーってのは
すっごい激務だから、時々辛そうに
してるのをみかけたりすると、
ついつい手を貸したくなっちゃうん
だけど…
でも、それは人間として当たり前のこと
じゃないのかなぁ?」