第4章 邪魔者
何を夢中で話しているのか……
智の前で見せる大人っぽい雰囲気とは違う
いかにも大学生らしいノリで笑っている。
ドクンと、全身が不快に波立った。
どうしてそんな、子供っぽい顔をしているんだ?
どうして、2週間ぶりのデートなのに…
そんなお邪魔虫を連れて来たの?
「翔っ!」
と、大声で呼ぶと、ようやく翔の視線が
伊野尾から智に移った。
「智…?」
それまでの年相応の顔が、
瞬時に大人びた恋人のそれに代わる。
それだけの事でも、
ムカついてしまう自分がいるのに……
「あっ…さと、し…先生!。
こいつ、サッカー部のマネージャーの伊野尾
そこで偶然逢ってさー」
と、翔は少し戸惑っていたが、
伊野尾に関しては悪気の欠片もなく
智に紹介してくる。
(はぁ~…偶然だって!!)
バカかこいつはー、と、智は腹の中で毒づいた。
広い街の中で、こんな偶然がホントに
あると思ってるのなら、
あまりにおめでたすぎるだろう。
10日ぶりの外出日のことも、合宿所の場所も
伊野尾は知っていたはず。
最初から偶然を装って、合宿所を出る翔の後を
つけてくるぐらい簡単な事だろう。
何で?どうして、それぐらいのことが
わからない?
「で、何?
俺との約束は無かったことにして
三人で一緒にお茶でもするの?」
と、イヤミたっぷりに、
智は伊野尾を睨みつける。
「そんな…、
お邪魔する気なんかありませんって!」
「フンっ…まぁ…
そんな気持ちなんかがあったら、
困っちゃうよなぁ…翔。
俺は、教師として高校時代から
こいつの悩みを聞いてやってたんだよ。
第三者がいたらできる話も
できなくなっちまう。
それに翔は、関係ない人間に
干渉されるの大っ嫌いだったから……
あっ、ごめん。
それぐらいの事は
マネージャーだったら知ってるかぁ……」