第3章 新たな対手
その隣に腰を掛ける。
そんな何気なさに家族の絆が感じられる。
智は思う、ここはいいところだと……。
カズは優しく包み込んでくれるし…
潤の秘蔵の酒はたくさんあって
今日は2本も空けちゃったし……。
1人息子の侑李は、もう寝ちゃったけど
おやすみのチューをしてあげたら
『ボク、お嫁さんにするならカズがいいけど
恋人にするなら絶対に智がいいなぁ~』
ってお約束のような可愛いことを言ってくれた。
ホントに、ここはいいところだ。
温かくて、優しくて、
愛に溢れた部屋。
男女がどうのとか、
血の繋がりがどうのとか、
そんなことは関係ない。
和也と潤と侑李と、三人で同じものを
守ろうとしている。
これこそ家族っていうものだと思う。
そのために和也が払った犠牲は大きすぎるし、
この先も障害は数え切れないほど
待ち受けているだろう。
それでも、自分と違って、強い意志と
それを成し遂げる力を持った和也は
きっと潤といっしょに、
この家を守り続けることだろう。
やがて、侑李が大人になって、
巣立っていってしまっても、
いつまでも二人で手を取り合って生きて
行くのだろう…。
そんな智の羨ましがる視線に
気づいてしまった和也は潤をいさめにかかる。
「智は、突然見も知らぬ翔の幼馴染みなんか
出できちゃったもんだから、
うろたえているんだ…。
潤!少しは気持ちを察してやれよ」
「気持ちは十分すぎるほど察してるよ。」
「だったら、少しは優しい言葉でも
掛けてやれのかよ。」
「だから、俺は優しくしてやれないだよ」
「何だ、それはー?」
智が、翔の幼馴染みを忌み嫌うように、
潤は、弟ってことだけで和也に無償の愛を
注がれている智を天敵と呼ぶほどに
嫌がっている。
そういう意味では、智の気持ちは
わかりすぎるほど
わかってしまう潤であった。