第3章 新たな対手
「智さんに、真面目に聞いたのが
間違いだったのかぁ……
だから、いいか?
この両手は、それぞれ違う物をつかむために
あるんじゃない。
たった一人の人を抱き締めるためにあるんだ。」
「……へ……?」
「俺の手は侑李の手は掴めない。
息子の頭を撫でることより、
もっと大切な和也を抱き締めることに
使ってしまっているんだ。」
「それって、許容範囲狭すぎない~
って言うか…かなり問題発言じゃないの?」
「ふふ…いいんだよ。
その分、侑李の手はカズが繋いで
いてくれるから…。
俺は安心してカズだけ抱いていられる。」
「潤って意外に甘えんぼなんだ…」
「そのセリフ、あなただけには
言われたくない。」
このめんどくさい男は、
いったいいつまで居座る気だろうと、
潤は少々苛立ち始めていた。
「俺が見たところ、
智さんはほどよく酔ったようだから
そろそろ帰った方がいいよ?」
と、表面だけは愛想のいい笑顔を
浮かべながら、心の中では、
この邪魔者をさっさと追い出さないと…
和也との楽しい夜が邪魔されると、
明らからさますぎる意図を含めて智を促す。
「あーおいらを追い出そうとしてる~
おいらは、一人寂しく暮らしているのに……
自分はかじゅとHしよーとしてる!!!」
「俺とカズは夫婦だから、
することをして何がわるいんだよ。」
「ずるいー!!
おいらは我慢しているのにぃ~!」
「だったら、翔といっしょに暮せば
いいんじゃん。
世間体を気にして同棲に踏み切れない人に、
文句を言う資格はないとおもうけど。
俺なんか、カズの意志なんか無視して、
無理矢理この部屋に引っ張りこんだような
ものなんだから…。」
と、潤がとんでもないことを自慢してる時、
侑李を寝かせつけたカズが戻ってきた。
「何を威張ってるんだ、お前は~!」
潤の頭をペチンと叩いた。