第3章 新たな対手
伊野尾に理不尽な要求を
突きつけられたその夜、
智は、兄の和也のマンションを訪ねていた。
「なーにが幼馴染みらよぉ~!
連絡取り合ってらってー。
ガキじゃあるまいし……
付き合いきれにゃいってんらよぉ~!!」
智は、お酒を飲むとあまり酒グセが
よろしくないのである。
普段でさえ感受性が豊かなのに、
お酒が入るとそこに絡み上戸が加わるから
始末に負えない。
「ずっと見続ける運命らって…。
笑わせないでもらいたいね!!」
今、智のグチの犠牲になっているのは、
和也の恋人、潤だった。
「まぁ、どこにでもいるんだよなぁ~
よけいなお世話をする人間ってのは」
潤は、グラスをカラカラと鳴らしながら、
適当に相づちを打つ。
「そーだよなぁ~。
よけいらお世話らってんだよ……。」
こうやって、智がクダを巻きに来るのは、
いつものことなのだ。
頑固な智は、些細なことですぐに
翔と喧嘩をしては、
一方的に怒って、こうやって和也と潤の
愛の巣に転がり込んでくる。
そうすれば、超ブラコンの和也は
必ず翔に意見をする。
家族団らんを智に邪魔されたくない潤も
当然翔に文句を言う。
そうして、鬼より怖い兄夫婦(?)に責められて
翔はいつも智と仲直りをする。
が、今度ばかりは翔が合宿中とあって、
それもできない。
「まぁ、俺から見れば、翔があっちこっちに
いい顔しすぎるんだと思うれど。」
「あーそれなぁ~。おいらも同感っ!!」
「智さんに同意されても嬉しくも
何ともないんだけど……。」
もう、うんざりだ…とばかりに
潤はグラスを置くと、テーブルの上で
両手を開いてみせた。
「俺の両手は、何のためにあると思う?」
「……え?何言っちゃてるの?……」