第3章 新たな対手
「不要になった男を、
自分から切り捨てるぐらいの勇気がなくて
どうしてプロなんかでやっていけるんだ?」
「…………。」
「あいつのプライベートに
他人が干渉することじゃない!!」
厳しく言い捨てた智だったが
伊野尾は、まだ言いすがってくる。
「俺は他人じゃありません。」
「何? たかが知り合って4ヶ月のマネージャー
なんて、他人と同じだよ。」
「俺は、幼馴染みです。」
「……え……?」
「同じ小学校だった。
翔は、その頃から地元のサッカークラブに
入ってて…
俺は、途中で引っ越しちゃったけど…
メールアドの交換もしてたし、
ずっとあいつの活躍は
雑誌なんかでみてたから……」
瞬間ーー…、智の瞳が揺れた。
それまでの怒りが
戸惑いに変わる。
「マネージャーとしてじゃないんです。
子供の頃から、ずっとサッカーに懸けてた
翔を知ってるから言ってるんです。
大学で再開するなんて思わなくって…。
きっとこれはサッカーをし続ける翔を
いつまでも見守ってやれって、
神様が俺にくれた運命なんだと思ったんです!」
「何……?」
「翔は、夢や家族や友人を大切にする
ヤツなんです。
なにも恋人か一番ってわけじゃない!!」
瞬間、二人の間にバチッと飛び散る火花。
(こ、こいつ~! )
ギッと、智は眉をつり上げる。
だが、伊野尾は、言いたいことは
すべて言ったとばかりに、頭を一つ下げると
「失礼します。」
と言い捨てて、帰っていった。
そうして、再び独りになった部屋の中は
クーラーが効きすぎているのか妙に
冷え冷えとしている。
窓の外には、うだるような夏の空が
広がっているのに……。
「……幼馴染み……?」
ポツリと、智はぶつぶつと独り言を言っていた。
智にとって、Jリーグ云々なんて話は
どうでもよかった。
だが、翔のそばに、自分より身近な人間が
いるのは許せない。
家族はしょうがない。
ご学友だって我慢する。
でも、幼馴染みだって?
同じ小学校だって?
大学で運命な再会をしたって?
そんなことは知らない。
翔から一言も聞いてないっーーー!!