第3章 新たな対手
「だから、別れてもいいよって
言ってるんだよ。」
「……え?………」
「すがったりもしない。
未練たらしいこともしない。
それどころか、俺の親父や叔父に頼みこんで
どんな小さなウワサも全部潰してやるよ」
「………え…?ほ…ホントに?」
「ああ。ただし、翔が直接、
俺に別れてくれって言っていえたらね」
「----!?」
「こっちだって、昨日今日で
男を好きになったんじゃないんだよ。
物心ついた頃から男しか見えないバリバリの
ゲイたんだよ。
いざって時の覚悟ぐらい
言われなくても心得ているさ。」
智だってバカじゃない。
もしかしたら翔は、マジですごい選手
なんじゃないかってこともわかっていた。
だからこそ、惑わしの記事には目を通さず
騒いでる連中の声にも耳を貸さず、
翔の将来とか可能性とか、
なんにも見ないフリをしていた。
そうでなきゃ彼と付き合ってなんかいけない。
同棲愛者のリスクを知りすぎている智が、
元教え子の足を引っ張ってるなんて
考えしまったら…
もう怖くて翔のそばになんかいられなくなる……。
だから…
何も聞かない。
何も知らない。
何も見ない……。
今だけ楽しければいい。
と、そう思ってきた。
ーーーでも、そろそろ本気で考えないと
いけないところまできていることも、
わかっている。
「翔が俺の前で、さっきのあんたみたいに
土下座して、サッカー選手として
生きていくためにスキャンダルは
命取りになるから別れてくれーー…って
言ったら、その場でスッパリ別れてやるよ。」
すべてわかっているから…
だから筋を通せと智は思う。
「それが、あいつの最低限の責任だろ?」