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もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第3章 新たな対手



「翔から聞いてると思うけど…
Jリーグのあるチームから選手として
迎えたいってオファーがあったんです。」

伊野尾は、すまなさそうにテーブルの前に
正座すると、そう切り出した。

「夏休みいっぱい練習に参加してもらって
その結果を見て正式に契約したいって…」

「夏休みは、サッカー部の合宿じゃないのか?」
「違います。翔は、今日からチームに合流して
練習を開始してるはずです。

えっ…聞いてないんですか?」

「Jリーグ云々は聞いていないよ。」
と、智は、あの日の翔の言葉を思い返す。

『俺、合宿に入っちゃうから、
あんまり逢う時間がなくなると思うんだ…』

そう言っただけで、
それが大学のサッカー部の合宿だとは
言わなかったなぁ…

でも、翔のそんな主語なしの物言いは、
珍しいことじゃない。

なにしろ、不言実行、何でも独りで決めて
独りでやり遂げる男だから…。

対して智は、まぁ他力本願?なのか?

言うだけは言うけど…
あとは誰かがやってくれるのをひたすら
待っている性格だった。

まぁそれでも、結局は誰かがやってきて
やってくれるのだから、
かまわないだろうと思っているが…。

伊野尾の顔を見ながらそんなことを
ぼんやり考えていた。

「じゃあ…翔は、先生にウソを
ついてたんですね。」

と、伊野尾が妙にムカつくことを言った。
その言葉の裏に、俺は何でも知っているのに、
あなたは何にも知らないんですね、
って優越感が覗いたのを智は見逃さなかった。

(こ、こいつ…嫌い~!!!)

智は、心の中で嫌いと判断した。

いったん嫌いと感じた人間の言葉は
たとえホントのことでも信じない。

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