第2章 足並みの乱れ
「俺との関係を続けたいなら、
もっと真剣に考えてくれーーー…!!」
智を慰めるために伸ばしかけた手を
翔は途中で引っ込めた。
眉をわずかに寄せて
戸惑ったように視線を逸らす。
「…俺……」
いつもはハッキリとした翔にしては珍しく
何やら言いずらそうに口を濁す。
「何だよ?ハッキリ言えよ。」
「舞に…妹に言っちゃた……」
「え…?」
「妹の友達に……
なんかゲイに興味のある子がいて…
この前ウチに遊びに来て話してたんだけど、
その手の漫画とか好きなんだって……」
「…な……………。」
「俺がサッカーやってるって言ったら、
体育会系にはホモって多いの?って訊かれて、
舞もノッて話してたから、
つい、俺の好きな人は男だって…………」
「----------…。」
その瞬間……智の顔からスウッと血の気が
引いていったのが、見ている翔にもわかった。
「そ、それで…、妹さんは…何て…?」
もう、怒る気力もなくなって
グニャリと、視界が歪んでいく。
耳元で血流の音が、うるさいほど
響いていた。
「それが、冗談だと思ったみたいなんだ。
うっそーとか言って、笑ってた……」
翔のその言葉で、ようやくホッとしたように
智は床に俯せた。
「……どうして……大事なことを
うっかり言っちゃうんだよ…
だから、お前はヘタレって
言われるんだよ……………。」
「でも、舞は大丈夫だ」
「お前なぁ~そんな保証どこにもないだろう。」
ノロノロと顔を上げ、疲れた声を吐き出した。
「もう嫌なんだよ…俺は…」
乱れた前髪を掻き上げるフリをしながら
こっそりと涙に潤んだ目を拭う。
「男ってだけで、汚らわしいものを
見るような目でみられ、
罵られるの……………。」
でも、智の本音は違った。