第2章 足並みの乱れ
温かい……
俺は、こんなにも柔らかくて……
温かくて、可愛いものに
かなうはずがないって
わかっているからこそ……
諦めていた……。
なのに……
翔だけは、そんなふうに割り切れなかった。
「なぁ~智。
今度は余裕でいられないほどマジなんだろ。」
そうだ……。
嫉妬を丸出しにしている自分がイヤで、
理解のあるフリをして…
女と付き合えって言っておきながら
次の瞬間には後悔していた……。
それは…
翔が特別だからーー‥?
「でも、俺はイノッチの時だって
マジだった。」
「うん。
それはちゃんとわかってる。
でも、今までの相手と同じで
ベターであって
ベストじゃなかったんじゃないの?」
「ベスト…じゃ…ない…?」
「今は一番を見つけたってことだろ」
「一番…!!!!」
(さとしさん…
ヤなんだろ?俺が女と話すの?
先生の方が百倍いいよ…。
忘れないで…
俺を動かせるのは
智さんだけなんだから……。)
翔のことが頭の中を駆け巡っていった。
「ああ……
俺ってバカだーーー」
井ノ原は智を抱き寄せると
自分の肩に智の頭を引き寄せた。
「だからさ…
智、今度は諦めるなよ…
絶対に諦めるちゃだめだぞ。」
「……ん……うんーー」
智の頬から涙が幾重にも
流れ落ちていった。
そんな智の頭を井ノ原は
優しく撫でてやった。
「じゃ…元気でな……
お互い幸せになろーな……」
智の頬に触れるだけのキスをした。
「お…」
「じゃーなー」
井ノ原は赤ん坊を
抱いて帰っていった。
(ホント、いいやヤツ!!)
「ちょっと惜しかったりして…」
やっぱり大人の男は最高じゃん…………
なんて思いながらルンルン気分で
公園を後にしようとした時だった……。
「何をしてるんだ!!!!」
そこには、いるはずのない
男の姿があった……。