第2章 足並みの乱れ
五十嵐学園からバスで30分ほど。
二年前に建てられたばかりの
ワンルームマンションの一室に、
智は住んでいた。
外装はおしゃれでも、
室内は殺風景の部屋だった。
今日は部屋の掃除もした。
テーブルにピザや
サラダやチキンなど
ご馳走を用意して、
一緒に夕食を取ろうと
お腹を空かせて待っていたのだ。
夜の九時を過ぎた頃、
ようやく現れた翔は
「ごめん…………
先輩に誘われて、
ご飯、食べてきちゃたんだ……」
と開口一番に言った時には、
さすがに迎えた玄関で先で
蹴り出してやりたくなったが…
「……だったら連絡ぐらいして
欲しかった……バカ……」
と小さい声で文句で我慢した。
自分でも偉い偉いと
心で褒めてやりたかった。
フローリングの床に
ドカッとしゃがみ込むと、
すっかり冷めてしまったピザに
手を伸ばす。
「それ、温めて食べたら?」
翔が気づいて、
さっとピザの乗った皿を
横取りする。
ついでにチキンもレンジで温め、
冷蔵庫から冷えた
缶ビールを取り出してきて、
わざわざプルトップまで開けてから
「乾杯しよう!」
と差し出してくれた時には、
智の気分もご機嫌になっていた。
やっぱり智は寂しがり屋で
甘えん坊だから優しくして
ほしいのだ。
冷めてしまった料理だって
翔が温めてくれるだけで、
どんなご馳走よりおいしく感じる。
好きな男の笑顔は、ビールより
心地よく智を酔わしてくれる。
「食べる?」
なんて言われたら、
思わず食べさせて……
と言わんばかりに、
アーンと口を開いてしまう。
翔は、ニヤッと笑いながら、
ちゃんと口まで運んでくれる。
他人には決して見せられない
熱々ぶりなのだ。