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もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第2章 足並みの乱れ



なのに……
どれほど二人の距離が開こうと、
ウワサは消えない。

翔が卒業して4ヶ月もたった……
いや、まだ、たった4ヶ月だ。

たとえ1年たとうと、
2年たとうと、自分に興味を
持つ者が現れるたびに、
こんなふうに探られるのだ。

武井何某など、意識の端にも
引っかかっていなかった男までが
簡単に踏み込んでくる。

好意の名の下になら、
他人の秘密を掘り起こす権利が
当然あるとでも言わんばかりに……。

そうして、翔がサッカー選手として
名を馳せれば馳せるほど、
不躾な興味を抱く者は
増えていくだろう。

どんなに隠そうとしても、
しつこく付き纏われる。

「あーもー……
うんざりだっ~!」

智はそう叫ぶなり、
手にした筆を思いっきり床に
叩きつけた。

『人の不幸は蜜の味』
とか言うが、
どうしてほっといてくれない?

俺がホモで、翔が俺を愛したことで
いったい誰に迷惑した?

そりゃあ、翔の追っかけを
している女達は
ガッカリするかもしれないけど……。

智はいつもいつも、思いはそこに
返っていってしまう。

他人なんか関係ないじゃないかと。
二人だけで生きていけないのかと。

だけど、それは恋に生きる智の
考えでしかない。

翔には、プロのサッカー選手となって
そらに世界に出て活躍する夢がある。

翔を期待する家族がいる。
学友がいる。
ファンがいる。

そういった人々の協力なしでは、
翔の夢は成り立たない。

ひんなこと智にだってわかっている。
だけど、理解はできていても……
納得はできない。

感情がついていかない。

仮にだ、翔さえいればそれでいいと
思っている智と、
他に大事なものがある翔。
その決定的な違いが、
この先ジワジワと二人を追い詰め、
引き裂いていくかもしれない。



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