第2章 足並みの乱れ
何が一番許せないって、
カツカレーとキツネうどんの、
その組み合わせなんだよ!!!!!!
ご飯もうどんも炭水化物、
そのうえカツと油揚げときたら、
もう見るだけで胸焼けしそうな
油尽くし……。
その、何にも考えてない鈍感さが
許せないっ!
おかげて、せっかくのカキフライ定食を
前に、一気に食欲が
なくなってしまった。
この責任をどう取ってくれるんだ!!
さっきまでのルンルン気分が、
急転直下、泥沼にさようなら~だ。
なのに、この男は本物のバカなのか?
熱血はブリッコなのか?
デリカシーの欠片もない武井は、
よりにもよってとんでもないことを
言ったのだ。
「でも、俺は、大野先生が
好きですよ!」
と、学食中に響き渡るような、
超でかい声でもって……
「も…もちろん、
教師として尊敬してるって
意味ですけどね♡……。」
なんて……
わざとらしくつけ加えた
白々しいだけの言葉……
だが、おいおい……大丈夫か?
この男は…♡って……
生徒達は知っている。
大野智は、高根の花だって…
誰もが、その可愛らしさと
ふにゃと笑う笑顔に憧れ、
プレゼント攻撃をかけ、
思いの丈を綴ったファンレター、
ライン交換をして欲しいと頼む輩は
後を絶たないが…
でも五十嵐の暗黙の了解で
あくまでもアイドルに群がる
ファンの立場でなければ
ならないと……。
それは、決して手の
届かない夢のようなもの……。
色気のない男子校の潤い……。
高校時代の一時を彩る輝き。
智のことでみんなで騒いで、
楽しんで、でも、卒業と同時に
美しい思い出に変える。
それでいいのだ。
それ以上は何も望まない。
賢い五十嵐の生徒は、
それっくらいみんな了承している。
でも、この熱血風体育教師は
そんな暗黙をまだ知らぬどころか、
(バカじゃんあいつ……。
マジかよ……。)
と、学食のあちらこちらで軽蔑の視線と
大きな溜息が飛び交っている
ことにさえ、気づいていなかった。