第2章 足並みの乱れ
すべては、智の一方的な
寂しさからおきた誤解で
しかなかっがーーー……。
今はようやく気持ちも落ち着いて
やっぱり翔を信じなきゃと
思い始めたところだったのに……。
よくも、こいつは……
人が忘れようとしていたことを
思い出させてくれたなぁ……
こ、こいつ!!!!
「なんか信じられないよなー
いくら大野先生が可愛いからって、
櫻井は教え子でしょう。
なのに、先生とそんな関係
だったなんて……」
「だったら、信じないければ
いいじゃん!」
智は低く吐き捨てた。
お前となんか話したくないんだよって
頑固な意志を込めて。
「へぇ……?」
「武井先生。
いくら同僚の教師だって、
たかが生徒のウワサ話に躍らされて、
そんなこと訊いてくるなんて
失礼じゃないですか?」
「え……、いや……、たから俺は、
ウワサが信じられないから……
先生に直に本当のことを
訊こうと思って……」
智は武井に向かい最高の笑顔をすると
「不作法だね……。
他人の性癖に関するような質問を
する権利が、あなたのどこにある?
ちょっと廊下で挨拶するていどの
他人に……」
と思いっきりのイヤミを込めて、
『他人』を連呼する。
そして、完全冷血な無表情になると
「俺は、他人に詮索されるのが、
大っ嫌いだからー!!!!」
「えー?
大野先生、俺のこと嫌いなんすかー?」
おいおい……
だから、そうだって
言ってるだろう……。
顔も、声も、その図々しい態度も、
センス皆無のジャージ姿も、
何一つ許容範囲外だけど…………。