第13章 ー番外編パート2-変態惨状!!
午後の授業を終え、
準備室の片付けを済ませて
教員室に戻ってきた智は
さっさと、帰る支度を始める。
そこへ、突然翔が血相を変えて教員室に飛び込んでくると、智の腕を掴んだのだ。
そして、
「お先に失敬します…………!!」
と、律儀に挨拶をして校舎を後にした。
「ちょっ…お前っ…どこ行くんだよ!?」
「…いいから黙って来て!!」
陽も陰ってきた夕暮れだった。
いつもは、電車通勤をしている二人だったが
今日は珍しく車で学校まできていた。
翔は黙ってハンドルを握りしめ
二人のマンションとは全く別方向に
ハンドルを切った。
アクセル全開…
景色が消えるように流れていく。
「ねぇーどこに行くの?」
「………………」
「一体どうしたんだよ。俺なんかしたかぁ~?」
そりゃあ、平手打ちはまずかったかも
しれないけど……
大体、あんな場所で変な妄想膨らましている方が
絶対に悪いと思うけど……
横目で見る翔の表情は暗く険しいままだった。
智は質問に答えない翔を怪訝そうに
眺めながらも、黙ってシートに身を
委ねるしかなかった。
「…智……今日、すごくいい笑顔だったね…?」
しばらく車を走らせたところで、
翔はエンジン音に掻き消されそうな、
そんな小さな声で呟いた。
「え…?」
思いもしなかった言葉に、
智は思わず間の抜けた声を上げてしまった。
自分たちは教師なのだ。
生徒達のやる気を引き出す為に、
笑顔や愛想を振り撒くのは言うまでもない
ルールのはずだろう……
特に俺より頭脳明晰の生徒を従わせるには、
それは必然的に作り笑顔はあまりまえなのだ。
智は首を傾げて、暫し考える。
「…そう、だっけ…?」
いつも通り仕事をしたつもりだった智は、
不思議そうに翔の横顔を見つめた。
「そうだったよ……。
俺が学生の時は、あんなに笑顔の安売りなんか
しなかったのに…!!」