第11章 最後の虚言
「だよね。俺は日本一センターフォワードに
なるより、智の専属のトレーナーで
いる方を選んだんだよ。
この情熱が通じないはずがないよね♡」
「バカッ……!」
思いっきり呆れた声で吐き捨てて、
でも、智はすぐに、儚げな顔をして
「俺なんかのために……
夢を捨てるなんて………………
ホントに大バカだよ……」
智の小さな呟きと切なげに指を噛む仕草が
妙に可愛くて…
翔は思わず、いつものつもりで肩を
抱いてしまった。
「捨ててなんなかないよ。
サッカー部の顧問になって、
まずは目指せ日本一!!
その次には、ワールドカップに出場できる
ぐらいの選手を育てててみせるよ。」
「……へぇ……?」
「日本一の監督ってのも、
カッコイイと思わない?」
「どっからくるんだろう?その自信は~?」
呆れながら、でも、翔なら本当に
やれるかもしれないと智は思ってしまう。
持ち前の執着心と頭脳で、宣言どうり
智を手に入れたのだから……
「智先生。」
「え……?」
「昔は、先生って呼ぶなって
よく怒られたよね。」
「………………」
「高校を卒業したら、
もう生徒と先生じゃないんだら……
その呼び方もうダメだって…。」
「あっ………………」
そんなことも確かに言った。
『先生……』と呼ばれるたびに、
教え子に手を出した
いけない教師だってことを
思い知らされているような錯覚に陥って…
先生って呼ぶなら、名前で呼んでって
言ったのは智の方だった。