第11章 最後の虚言
「あっ!!…翔……お前、ウソついてただろう」
ふと、思い出したように、
智は切り出した。
「え……?」
「足!!本当は、ちゃんと治っているんだろう?」
「………………」
翔は何も言わなかった。
ただ、ニコニコ微笑んで、まるで子供を
なだめるように智の頭を撫ででいた。
だって……
智は今にも泣きそうな顔をしていたから
当の本人は気づいていなかったけど…………。
『プロのサッカー選手としては通用しない。
それを償いたいと思うなら……
一生俺のそばにいろ!!!』
それが、翔が智についた一世一代の大ウソ……。
あの時、脅迫紛いに迫られでもしなかったら
智は翔のそばにはいられなかった。
きっと、智のことだから、何だかんだと理屈を
つけて、翔から離れただろう。
「俺バカだから……。
まさか、お前がそんなウソをつくなんて
思ってもいなかった……
簡単に騙されちゃた……」
「でしょー。潤さんに倣ったんだよ。」
「あの最低男のマネっこしたのか?」
「智とカズさんは性格は正反対としても……
根っ子のところで同じだから……。
カズさんが負い目を持つことで
素直になれたのなら……
智にも通用するかもって思って……」
「おい……。それって………
俺がお前を好きだって前提があってこそ
成り立つ方法だと思うけど……。
もしもだ、俺が翔を嫌いになったら
どうするんだよ。
俺は、負い目だけで、イヤイヤそばに
いなきゃならないってことになるんだぞー。」
「あれ??イヤイヤそばにいたんだー。」
「い…いや……べつに…そんなことは
言ってないけどさー……」