第11章 最後の虚言
「ふふ…誰かなぁ~そのおじいちゃんに
ラブレターくれたのは……?」
「………………」
「片っ端から暗唱してほい人はだーれかなぁ……?」
「うわぁ~!!
そ……それは勘弁してぇ~!!!」
和気藹々の雰囲気の中で、笑いが飛び交う。
いつの間にか『先生』と呼ばれることにも
慣れた。
ほとんどヤケになって始めた教職だったけど
2年前からは担任も委され
今ではどの生徒も可愛いと感じるように
なっていた。
そうして生徒達もまた、28歳になっても
衰えるどころか、さらに可愛さを
増していく智の容姿に、憧れと少々の恋心を
持つ存在として大切にされている。
「そーいえば……、体育の武井
辞めたんだってー?」
と、一番背の高い生徒が言う。
「あいつ、うざかったよなぁー。
俺んとこの顧問だったけど……、
時々、大野先生のことコッソリ見てたの
知ってる?」
「さぁ~?野球部のほとんど全員が
俺の隠れファンじゃないの?
グラウンド歩くたびに視線が刺さって来たから、
そうなのかと思ったよ♡」
「ああ~っ、そ……そんなことないってー!!!!!♡♡♡」
図星……を指摘されて真っ赤になった生徒は
「あっ、そ……そんでさー、次の体育教師って
どんなヤツか知ってる?
もしかして……野球部の顧問もその先生が
やってくれるのかなぁ……?」
と、必死に話題を変えにかかる。
「ふふふっ…それはないよ。
あいつは、たぶんサッカー部の顧問になると
思うから……」
そう言った智の顔に、艶やかな笑みが広がる。
いきなりの天使の笑顔を前に、
ボーッと見入ってしまった生徒達輪を抜けて、
智は真っ直ぐに歩みだす。
その視線の先まで……