第11章 最後の虚言
ましてや、ここまで夢中になってしまった
翔の代わりなんているはずもない。
いるとすれば……
翔に代わる、彼以上に素晴らしい新しい恋人
しかいないだろう。
でも……そんな相手に簡単に巡り逢う事が
できるくらいなら、こんな自暴自棄には
ならなかったと思う。
倒れるまで我慢したのは
翔しか考えられなかったから……
絶対的に欲しいと願うのは翔だけだから……
「……俺は……快楽の為だけに躰を
求めたりなんかしない。
心から愛し合うためだけにするんだ……」
その目も眩むほどの情熱ーー!!!
一回りも痩せてしまった躰のどこから
これほどの想いが……
パワーが隠されているのか?
「智……」
こんなに純粋な人がまだこの世の中にいたのか?
男に抱かれて悦ぶゲイだと……
本来、普通の人なら誰にも知られたく事実を
堂々と言い切り、
色目や興味本位から笑顔の大安売りをして
寄ってくる男達を手の上で転がしながら…
多少の我が儘を言って可愛い妖精を演じ…
恋多き人生を楽しんでいるように見せながらも
実は、その心の奥に秘められているのは
たった一人の男をだけを求めている
切ないほど純粋な人だったのだ。
他には何もいらない……
何も求めない……
家族も、名誉も、お金も、
愛しい男と比べたら
すべてがクズでしかないと……
智の望みは一つだけ……
いつも、いつも、自分の心に自由に
精一杯恋をしていたいだけなのだ……
「翔……お前以外の……誰をっーーー……」
涙目で訴える智の髪を
翔は優しく撫でで
「うん……。ごめん。」
小さく呟きながら、
瞼に優しくキスをした。