第11章 最後の虚言
「智…サッカーなんてどこでもできるんだよ。
日本代表の檜舞台でなくても
近所の小学校のグラウンドでだって、
そこにボールとゴールさえあればね……。」
「ホントに……?
俺にそんな価値があるの……?」
「価値ってなんだよ?
俺を見くびらないでくれるかなぁ~
俺は、たかがボールと人間を
比べたりなんかしない。
絶対にね。」
「た…かが……ボールっ……?」
「そうだよ。今じゃホームセンターでも買える
ただのサッカーボールなんだよ。」
優しい目、本気な口調、
すべてが智をいたわる想いで溢れている。
でも、智は喜んでいいはずの言葉なのに
素直に受け止めることができなかった。
翔がどんな考えでテスト生に挑戦したかを
知ったところで、
智のやってしまった事が、
言い訳になるわけじゃないから……
自分は何も信じてやれなかった……。
寡黙な男の愛を、何一つ信じていなかった。
そのあげくに、翔を振り回すだけ振り回して
こんな結果を招いてしまった。
自業自得なのだから……。
「翔……でも、俺は……、
自分が許せないーー!!」
裁いてほしい。
永遠に許さないで……。
相応の罰を与えてください。
責められる方が救われるんだと……
智は、しがみついている弱々しい手で翔に
訴える。
「智…」
翔は智の目をしっかりと見据えると、
心に決めていた、最初で最後の宣告を下す。
「智が自分のせいだと思うなら
一生かけてその身体で償ってくれ……」
「……え……?」
「俺が失った夢は、智でしか補えない。
ゴールを決めた時の快感に変わるものは、
智の躰でしか味わえないんだから……
だから…一生俺のそばにいろよ!!!!」
年上としてのプライドがある男に
償えと命じる。