第11章 最後の虚言
「俺は……智を苦しめたっていいんだ。」
「……え……?」
「俺が苦しめる分には、かまわないんだ。」
意外すぎる言葉に、
智は返す言葉失ってしまった。
「だってそうだろ?
たとえ俺がホントにサッカーができなくなって
智が自己嫌悪に陥ったてかまわないんだ。
俺のそばにさえいてくれれば
いつだって慰めてやれるんだから……」
「翔……?」
「二人で苦しむのならそれでかまわないんだ。」
「何……言って……る…の?」
「どうせ、俺の足は完全には戻らない。
大学でサッカー程度では通用しても
プロは無理到底むりだね。」
「-----!?」
瞬間ーーー……、智の目が、驚愕と絶望に
見開かれた。
「……か、完全には、戻らない……?」
「ああ、自分の身体のことは、誰よりもよく
わかってる。」
「俺のせいで………………」
智は夢中で翔のシャツにしがみつく。
「う…恨んでよ…!!!!
頼む……!!!俺を恨めよっーーーー!!!!!」
「何で?」
「何でって……だって………………」
「智っ!これだけは覚えておいて……。
俺は、お前と別れる気なんかさらさらない。
それに、智を興味本位の連中の視線に
さらす気もない。
だから、たとえ足がこうならなくても、
プロに入る気なんかなかった。」
「翔……」
「今回、テストに参加したのは、
俺が本気でプロを目指した時、
周りがどんな反応をするかを
確かめたかっただけなんだ。
そりゃあ……どうせならみんなの理解を得て
夢に近づけたらいいなぁ~って気持ちも
少しはあったけど……
でも、結果として、自分の甘さを
痛感しただけだった。」
そう言って、翔は、両手で智の頬を包み込む。