第10章 落魄
「…ウソだ…?」
「なんで俺が、ウソをつかきゃいけないだよ。
そんな理由なんてないだろ……」
「ち…ちょっと待って……
なんで智が失恋したと思い込んでいるんだよ。
俺はそんなこと一言だって……」
「言ってない?」
と、潤は翔の足に視線を送る。
サポーターの下から、生々しいキズ痕が
覗いている。
「足、ちゃんと動くんだよなぁ~
なのに、なんで一度もお前から逢いにいかない?
それって、智さんと縁を切りたいって
証拠じゃないのか?」
「違うっ!!!!」
「何が違うんだよ。
どんな言い訳をしているか当ててやろうか?
どうせ……
キズ痕の残った足を見せたくないからとか
いうんだろう。
それと、ちゃんと治って、
元通りサッカーができるようになって
からじゃないと、智さんが負い目を
感じるとかだろう……ってね。」
「-----!?」
「図星だろう。
至極読みやすいよ、お前の考え何て……
だから、智さんやカズにヘタレって
言われるんだよ。」
カズのため、侑李のため、他人をだますこと
なんて、平気でやってのける潤にとって
翔の頭の中なんて、手に取るように
わかってしまう。
それにしても、あまりにズバリと胸の中を
言い当てられた翔は、返す言葉を失った。
まさに潤の言う通りだった。
智にキズだらけの足を見せたくなかった。
きっと彼はこの足を見てしまったら
自分を責め、責任を感じてしまうだろう。
それだけは、嫌だった。
だから、せめて元通りサッカーができるように
なってから逢いに行こうと思っていた。
もう、これ以上智を苦しめたくなかったから……
一日でも早く逢いに行きたくて
毎日必死にリハビリをこなしていたのに……
「潤さん……俺、間違っていたのかなぁ……」